覚せい剤取締法違反事件で保釈を求めたい③
- 2020年5月29日
- コラム
覚せい剤取締法違反事件で保釈を求めたい③
覚せい剤取締法違反事件で保釈を求めたい場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
【事例】
神奈川県茅ヶ崎市に住むAは、数年前からインターネットを通じて覚せい剤を購入し、自分で使用していました。
しかしある日、Aが覚せい剤を購入していた売人が神奈川県茅ヶ崎警察署に逮捕されたことをきっかけとしてAにも捜査の手が伸び、Aも覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
Aの家族は、突然の逮捕に驚き、どうにかAの身柄解放ができないかと困っています。
そこで、Aの家族は覚せい剤使用事件にも対応している弁護士に相談し、保釈も見据えた身柄解放活動を開始してもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
【保釈の条件〜保釈の種類について】
今回の記事では、保釈金を納付する以外の保釈の条件についてご説明致します。
まず、刑事訴訟法では、保釈について以下のように定められています。
刑事訴訟法第89条
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
第1号 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
第2号 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
第3号 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
第4号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第5号 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第6号 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
この刑事訴訟法第89条にさだめられている保釈は、「権利保釈」と言われています。
第1号〜第6号の事由に当てはまらない場合に保釈請求があれば裁判所は保釈を認めなければならないということは、すなわち、第1号〜第6号の事由に当てはまらないことが保釈が認められる条件であると言えます。
第1号〜第3号は、問われている犯罪の刑罰の重さや前科、犯行態様が条件となっています。
第4号〜第6号は、被疑者段階の逮捕・勾留による身体拘束でも要件となる、罪証隠滅のおそれの有無や被害者等に対して危害を加えるおそれの有無等が条件となっています。
ですから、保釈を目指す場合には、前回の記事で触れた保釈金を用意することだけでなく、まずは第1号〜第6号に当てはまらない=保釈を認めるべきであるという主張をしていくことになります。
では、この保釈が認められる条件(刑事訴訟法第89条第1〜第6号に当てはまらない)に当てはまらない場合、どうしても保釈が許されないかというと、そうではありません。
刑事訴訟法には、以下のような規定もあります。
刑事訴訟法第90条
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
刑事訴訟法第91条第1項
勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。
一般に、刑事訴訟法第90条に規定されている保釈は「裁量保釈」、刑事訴訟法第91条に規定されている保釈は「義務的保釈」と呼ばれています。
先ほど取り上げた刑事訴訟法第89条の「権利保釈」が許されない事由(第1号〜第6号の事由に当てはまる場合)でも、「裁量保釈」によって保釈が許される場合があります。
そのため、たとえ「権利保釈」によって保釈を求めることが難しい場合でも、そのほかの事情を適切に主張することで「裁量保釈」による保釈を求めていくことが可能なのです。
このように、保釈を請求するには、単に保釈金を用意すればよいというだけではなく、「権利保釈」や「裁量保釈」といった保釈が認められる条件に合う環境を作っていくことも重要なことであることがおわかりいただけたと思います。
こうした環境づくりや作った環境の適切な主張は、刑事事件の専門家である弁護士のサポートを十分に受けながら行っていくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、刑事事件専門の弁護士が保釈に関するご相談・ご依頼も承っています。
覚せい剤取締法違反事件の保釈についてお悩みの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。