護身用の木刀所持で職場対応
- 2020年6月7日
- その他の刑法犯事件
護身用の木刀所持で職場対応
護身のため、車の中に木刀を載せていたことで警察官に検挙され、職場に連絡されてしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県藤沢市在住のAは、公務員の職に就いています。
Aは以前、藤沢市内のATMでお金を下ろした後、藤沢市内の路上にて背後から後頭部を殴られ、現金全てを奪われるという強盗致傷事件の被害者となってしまいました。
それから暴漢に襲われることを恐れ、自分の車に護身の目的で木刀を載せていました。
ある日、Aが藤沢市内で自動車を運転していたところ、藤沢市内を管轄する藤沢警察署の警察官に停車を求められ、職務質問とそれに付随する所持品検査に応じました。
そこで、護身用の木刀がトランクから出てきたことから、Aは軽犯罪法違反で検挙されることとなりました。
その際警察官は、Aの職場にこの事件について連絡をしました。
Aは刑事事件専門の弁護士に、捜査機関への対応だけでなく、勤務先への対応についても依頼をしました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【木刀の所持で犯罪に】
剣道などのご経験がなく木刀がどのような物か分からない、という方もおられるかもしれません。
木刀は、赤樫、黒檀、白樫、スヌケといった木を用いて作られている、日本刀を模した物です。
竹刀に比べて重く、一般的に剣道の型稽古や素振りに使われることが多いです。
木刀に、いわゆる刃はついていないため、縦横刀剣類所持等取締法違反(通称:銃刀法違反)には当たりません。
しかし、以下の法律が問題となります。
①神奈川県迷惑行為防止条例
我が国では憲法の下、国家間で定められたルールである条約や国会で定められた法律、内閣や省庁が定める命令の他に、各自治体(都道府県や市町村)の議会が定める条例というものがあります。
今回のケースで問題となる神奈川県迷惑行為防止条例は、神奈川県が定めるルールですが、その2条3項で「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、鉄パイプ、木刀、金属バット、刃物…その他これらに類する物で、人の身体に重大な危害を加えるのに使用されるおそれがあるものを、通行人、入場者、乗客その他の公衆に対し、不安を覚えさせるような方法で、携帯してはならない。」と定められています。
これに違反した場合の罰則は「50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。(同条例15条4項1号)
②軽犯罪法違反
神奈川県内で定められている①の条例のほか、全国一律に定められている法律にも木刀が問題となる条文があります。
それは、軽犯罪法です。
軽犯罪法では、その1条で「左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。」と定め、2号で「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」と定めています。
木刀については、先に述べたとおり他人の生命を害したり、身体に重大な害を加えたりすることが出来るため、木刀もこの対象となります。
①②ともに共通することは、「正当な理由」がない場合に法律に違反する、ということです。
よって、正当な理由がある場合、例えば剣道の練習のため木刀を持ち運びすることや購入した木刀を家に持って帰ること、については、これらの罪に当たりません。
ただし、ケースのAが言う護身用という理由については個別の事案によって判断されるべきところ、木刀を護身目的で持つことは正当な理由とは評価されず、違法になる可能性があります。
【勤務先への説明等に対応する弁護士】
刑事事件を起こしてしまった場合に公務員や大手企業に勤める方が気になる問題の一つに、勤務先への連絡・発覚があると考えられます。
勤務先に事件が発覚する理由としては、実名報道がなされた場合や長期間の身柄拘束で連絡が取れなくなった場合、捜査機関から連絡が行く場合等が考えられます。
ケースについて検討すると、実名報道については、捜査機関と報道機関の裁量による部分も大きいのですが、逮捕された事案に比べ在宅で捜査を受ける事案は報道の可能性が低いと言えるでしょう。
また、逮捕されなければ出勤し乍ら任意に捜査を受けることが出来るため、これで勤務先に発覚する可能性はありません。
最も、捜査機関から勤務先に連絡が行く場合、というのがままあり、とりわけ公務員の場合には検挙されて直ぐ担当者に連絡が行くという事例もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、これまで木刀の所持などによる迷惑防止条例違反事件や軽犯罪法違反事件についても取り扱いがあります。
神奈川県藤沢市にて、護身用の木刀所持で検挙されて勤務先への連絡を阻止したい、あるいは勤務先に自身が置かれている状況についての説明をして欲しい、という方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。