常習賭博で出頭①
- 2020年8月5日
- コラム
常習賭博で出頭①
常習賭博をしていたものの捜査機関の捜査に気が付き出頭したという場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県大和市在住のAは、大和市内の会社を経営する会社経営者です。
Aは友人Xに誘われて、大和市内にあるビルの一室に行きました。
そこでは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(略称:風営法又は風適法)上の許可を受けていない、いわゆる闇パチスロや賭け麻雀が行われていました。
A自身、その場に行ってみると非常に楽しい場所だと感じ、その後繰返し通うようになりました。
ある日のこと、家の近くに某国産メーカーの車両が停車していることに気が付きました。
Aは自動車が好きで、その車が捜査機関の内偵捜査などに使われる場合が多い車であることに気が付きました。
Aは、心当たりがあるとすれば、大和市内のビルの一室で行われている賭博しかないと考え、大和市内を管轄する大和警察署に自首した方が良いのか、刑事事件専門の弁護士に相談しました。
担当の弁護士は、自首ではなく単なる出頭にあたる可能性があると説明を受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【賭博(とばく)について】
まずは、賭博罪(単純賭博罪)について、条文を御確認ください。
刑法185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。
賭博罪のいう賭博とは、「偶然の事情に関して財物を賭け、勝敗を争うことをいう。」とされています。
偶然の事情とは、当事者において予見できないことなどを指します。
チョボイチやルーレットなどはこれに当たることが容易に想像できるかと思いますが、将棋や囲碁、麻雀などは戦略が重要になってくるためこれには当たらないのではないかと思う方がおられるかもしれません。
しかし、偶然性の大小に左右されず、少しでも偶然性の影響下に立つ場合には、これが認められるとされていて、判例上、前述のゲームの結果に対して財物を賭けた場合には賭博罪にあたるとされています。
もっとも、条文では賭けの対象が「一時の娯楽に供する物」であれば、形式的には賭博に当たる行為であっても処罰されないこととされています。
一時の娯楽に供する物とは、「費消の即時性」と「価格の僅少性」の両者を考慮されていると考えられます。
そのため、茶菓子や食事などがこれに当たり、これらを賭けても処罰されません。
しかし、金銭については、性質上一時の娯楽に供する物とは言えません。
もっとも、一時の娯楽で消費される程度の少額であれば成立しないとみられます。
では、金銭を賭ける競輪、競馬、競艇や宝くじなどはどうなるのでしょうか。
戦後我が国では財政上の理由から、競輪や競馬、競艇や宝くじについては特別法を設け、公認としてきました。
これらはあくまで公営ギャンブルとして特別法上認められているため、一般の方が真似して宝くじなどを行った場合、賭博罪に問われる可能性があります。
【常習賭博罪について】
ケースのAは繰返しギャンブルをしていることから、「反復して賭博行為をする習癖のある者」と認められ常習賭博罪が適用される可能性があります。
常習賭博罪の条文は以下のとおりです。
刑法186条1項 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
常習と言えるか否かについては賭博の種類、賭けていた金額などを総合考慮して判断されるとされていて、反復する習癖があると認められる場合には常習賭博罪が適用することが可能です。
但し、実際には常習的であるか否かについては、捜査機関が張り込みするなどいわゆる内偵捜査を行うなどして足繁く通っていると認められる被疑者については常習賭博罪が適用されるパターンが多いようです。
【自首と出頭は違う?】
≪詳細は明日のブログをご参照ください。≫