道路での危険行為
- 2020年11月18日
- その他の刑法犯事件
道路での危険行為
道路に石やコンクリートブロックを置いた、あるいは紐を括りつけるなどして危険を冒した場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市川崎区在住のAは、川崎市川崎区内の会社に勤める会社員です。
Aは日頃から会社内で冷遇されていてストレスを受けていました。
そしてその捌け口を考え、道路上に物を置いてバイクの運転手が転倒するところを見られたら良いと考えました。
そこで、Aはホームセンターに行ってコンクリートブロックを購入し、ある日の深夜にそれを川崎市川崎区内の路上に置きました。
その後少し離れた場所でその様子を見ていたところ、配達業をしているVが原動機付自転車でその道を通り、コンクリートブロックにひっかかり転倒しました。
Vは目撃者による通報で駆け付けた救急隊員により搬送されましたが、数日後に死亡してしまいました。
川崎市川崎区を管轄する川崎警察署の警察官は、捜査の結果Aによる犯行であるとしてAを逮捕しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【道路に物を置いた場合の罪】
ケースのAは道路に物を置き、それによりVは転倒して死亡しています。
このような場合、どのような罪に当たるのでしょうか。
以下で検討していきます。
・殺人罪などの適用
ケースの場合、被害者であるVは死亡しています。
そして、その原因はというとAがコンクリートブロックを道路に置いたことが起因した転倒事故によるものです。
よって、Aは殺人罪に問われる可能性があります。
ただし、殺人罪の適用には確定的故意や未必の故意が必要です。
前者は相手が死亡するという確信があるもので、後者は相手が死亡してしまうかもしれないがいいや…と言った程度の意識で足りるものです。
それらの故意が認められなかった場合、殺人罪ではなく傷害致死罪などでの立件も検討されることでしょう。
刑法199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
刑法205条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
・往来妨害罪の適用
鉄道の往来を妨害した場合には往来危険罪が成立することになりますが(併せてお読みください≪遮断機のバーを破壊して少年鑑別所送致≫)、ケースの場合には道路にて往来を妨害するような事件を起こしています。
道路の往来を妨害した場合、往来妨害罪が検討されます。
往来を妨害する行為とは、人や車馬が通路を往来することを不可能又は困難にさせる状態をつくり出すことを意味します。
これにはバリケードを設置するなど物理的に走行できないようにする場合は勿論のこと、ケースのように物を路上に置いたり標識や信号機などを破壊したりする場合にも成立します。
なお、往来妨害罪は具体的に危険な状態にしただけで成立するもので、実際には被害者が出ていない場合でも適用されます。
ケースの場合は往来の妨害により被害者を死亡させているため、刑法124条2項により、前述の傷害致死罪と同じ「三年以上の有期懲役」に処されます。
刑法124条1項 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
同2項 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
・道路交通法・道路法などの違反
そのほか、道路交通法は「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」と定めているほか(法76条3項)、道路法という法律では「みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。」を禁止しているため(法43条2号)、これらの法律にも違反することが考えられます。
神奈川県川崎市川崎区にて、御家族が道路にコンクリートブロックを置くなどして往来妨害罪等の罪で逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。