キャッシュカード譲渡で取調べ
- 2021年2月4日
- コラム
キャッシュカード譲渡で取調べ
銀行口座のキャッシュカードを譲渡した、あるいは売買した場合の罪と取調べについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市西区在住のAは、横浜市西区内でアルバイトをしています。
Aは飲食店でアルバイトをして生活していましたが、昨今の情勢からアルバイトができなくなってしまい、生活苦に追いやられていました。
Aは融資を希望しましたが、既に金融会社からの借入はできない状況だったことから、多少怪しいとは思いながらもネット上に書かれていた連絡先人連絡し、融資を希望しました。
業者は、免許証のコピーと指定された銀行口座のキャッシュカードを送れば、その口座に融資額を振り込んで送ると説明を受けました。
それを信じ切ったAは、指定された銀行口座を持っていなかったため、近くにある銀行に行って口座を開設し、そのキャッシュカードを指定された郵送先に郵送しました。
しかし、その後業者とは連絡がつかなくなり、キャッシュカードは返されませんでした。
その数ヶ月後、銀行から「預金口座等に係る取引の停止等の措置の実施について」という書類が届いたことから、横浜市西区を管轄する戸部警察署に自分は騙されたと被害を訴えに行ったところ、反対に犯収法違反での捜査を受けることになり取調べを受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【キャッシュカードの譲渡・売買について】
弊所には、ケースのように融資をお願いするために銀行口座のキャッシュカードを送ったが送り返されなかった、あるいは銀行から取引停止の通知が来た、ということで被害に遭ったという御相談を多々承ります。
これらは特殊詐欺グループの手口で、キャッシュカードを送れば金を送ると嘘をつき、そのキャッシュカードを特殊詐欺に用いるのです。
キャッシュカードを送ったのち、通帳記入などをすると数万円が残って入っているという場合もあるようですが、それは特殊詐欺の被害金である可能性が高いです。
しかし、Aのような方は被害に遭っている可能性がある一方で、刑事事件の被疑者(加害者)にあたる可能性が高いのです。
・犯収法違反
犯収法は、正式名称を犯罪による収益の移転防止に関する法律と言います。
この法律では、銀行口座を開設した際に交付されるキャッシュカードや通帳を有償・無償に関わらず譲り受ける・譲り渡す行為は禁止されています。
犯収法28条1項 他人になりすまして…当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なもの…を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
・詐欺罪
上記に加え、Aの行為は詐欺罪に当たる可能性があります。
銀行で口座を作っている行為が問題となるのです。
銀行口座は、登録した本人が利用することを前提に開設をしています。
ケースのAは、自分で使う目的ではなく融資してくれるという業者に送る目的で銀行口座を開設し、結果としてキャッシュカードと通帳を受け取っています。
このキャッシュカードと通帳は、詐欺罪の言う財物にあたるのです。
刑法246条1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
【刑事事件の取調べ】
Aは知らぬ間に刑事事件の被疑者になっています。
被疑者は身柄拘束されている事件でも在宅の事件でも、取調べをうけることになります。
取調べでは、警察官などの捜査機関が質問して被疑者はそれに返答し、供述調書という書類にまとめられます。
供述調書はのちに裁判になった場合の証拠になる重要な書類です。
神奈川県横浜市西区にて、銀行のキャッシュカードを譲り渡してしまい犯収法違反などの罪で取調べを受けた方、あるいは受ける予定の方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で御相談いただけます。