強盗致死で裁判員裁判に
- 2021年2月9日
- コラム
強盗致死で裁判員裁判に
【ケース】
神奈川県横須賀市在住のAは、横須賀市内で自営業をしています。
Aは、昨今の情勢で経営状況が悪化し、生活が立ち行かなくなりました。
そこで、Aは横須賀市内の小売店に閉店後の時間に忍び込み、店員に刃物を突き付けて「金を出してください」と言って金庫を開けさせ、現金を奪って逃走しようとしました。
しかし、店を出ようとしたところ店員VがAを取り押さえようととびかかってきました。
その際Aは手に持っていた刃物をVに向けてしまい、刃物がVの喉に刺さりました。
Aは逃走しましたが数時間後に捜査中の横須賀市を管轄する浦賀警察署の警察官により逮捕され、その後Vが死亡してしまったため強盗致死罪に切り替えて捜査を受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【強盗事件は結果で罪が異なる】
ケースのAは他人を脅して金を奪い取っています。
これは、強盗と呼ばれる行為です。
強盗の罪については刑法に定められていますが、強盗はその結果によって罪名が異なり、刑罰が各々変わってきます。
・相手が怪我をしなかった場合
強盗事件を起こしたものの、相手には怪我を負わせることなく強盗した場合、強盗罪が適用されます。
強盗罪の条文は以下のとおりです。
刑法236条1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財産を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
・故意なく相手を怪我させてしまい、あるいは死亡させた場合
強盗事件などの場合、被害者は当然被疑者に対して抵抗することが想定されます。
もちろん、体格や性別などを考慮して抵抗しないことも考えられる一方で、抵抗をした場合、被疑者は怪我をさせるつもりはないものの結果として被害者に怪我を負わせてしまうということが当然に考えられます。
このような形で被害者が怪我した場合を強盗致傷罪、死亡してしまった場合を強盗致死罪として、それぞれ強盗罪より重い刑罰を用意しています。
条文は以下のとおりです。
刑法240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
・故意に相手を怪我させ、あるいは死亡させた場合
強盗の被疑者が被害者を故意に痛めつけ怪我をさせたり死亡させた場合、強盗致死傷罪より更に罪が重い強盗傷人、強盗殺人罪として扱われます。
これは主観的要素であり、条文は強盗致死傷罪の場合と同じですが、実際に宣告される刑罰はより厳しいものになります。
【裁判員裁判について】
裁判員裁判は、平成21年5月21日からスタートしました。
裁判員制度を取り入れることで、国民が刑事裁判に参加することにより「裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されて」いるそうです。(最高裁判所ホームページより)
我が国で行われている裁判員裁判は、アメリカの陪審制のように有罪無罪の判断だけでなく、有罪の場合の量刑までも判断することになります。
裁判員裁判の場合は、職業裁判官3名と、衆議院選挙名簿に記載された18歳以上の中からクジで選ばれた6人の計9人で合議を組み、判決の言い渡しまでを行います。
裁判員裁判の対象となる事件は、①死刑又は無期の懲役・禁錮にあたる罪に係る事件、②法定合議事件であって故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪に係る事件、です。
ケースの場合、強盗罪で立件された場合には問題となりませんが、強盗致傷罪や強盗致死罪、強盗傷人や強盗殺人の罪で立件された場合には裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員裁判は、一般の国民が裁判員に選ばれるため、従来の判例に比べて厳しい判断が出やすい傾向にあります。
また、一般の国民が裁判員を務めるため、丁寧で分かりやすい説明や表現が求められます。
更に、裁判員裁判では公判前整理手続きが行われますので、公判前整理手続でいかに被告人にとって有利な証拠を引き出し、被告人にとって不利な証拠を採用しないよう努めることが重要になります。
神奈川県横須賀市にて、御家族が強盗致死などの裁判員裁判対象事件で逮捕され、起訴される可能性がある場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。