キャッシュカードを送っただけで犯罪に?
- 2021年2月11日
- その他の刑法犯事件
キャッシュカードを送っただけで犯罪に?
キャッシュカードを送った、あるいは売ったことで問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市港南区在住のAは、横浜市港南区内でアルバイトをし乍ら生活しています。
Aは生活苦で金が欲しかったため、ネット上で「保証人不要の借り入れ」と書かれたサイトにアクセスし、融資を受けようとしました。
すると、業者の担当者を名乗る者から連絡があり、「指定されたキャッシュカードを郵送すれば、そこに融資額を入金して返送する。」との説明を受けました。
Aは指定された銀行口座をもっていなかったことから、銀行に行って新規口座開設し、キャッシュカードを入手してから業者が指定した郵送先にキャッシュカードを郵送しました。
しかし、その後しばらく経ったもののキャッシュカードが返送されなかったため、キャッシュカードを盗られたと考え横浜市港南区を管轄する港南警察署の警察官に相談をしたところ、逆に取調べを受けることになりました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【キャッシュカードを送った場合の罪】
銀行で口座を開設すれば受け取ることができるキャッシュカードですが、これを第三者に積極的に渡そうと考える人はまずいないでしょう。
しかし、弊所ではこれまで以下のような連絡を受け、キャッシュカードを送ってしまったという御相談を受けました。
・キャッシュカードを●●円で買い取る。
・融資を依頼した際に、キャッシュカードを送ればお金を振込んで送り返す。
・キャッシュカードを送れば、その口座を投資のために使用し、利益を残した状態で渡す。
・ブラックリストに登録されてしまったため口座が作れず、助けてほしい。
以上のような手口でキャッシュカードを送るよう指示されるようです。
しかし、このようにして送られたキャッシュカードは振り込め詐欺などの特殊詐欺に利用される可能性が極めて高く、結果として他人に迷惑をかける行為に繋がります。
そのため、キャッシュカードを送ったり売ったりする行為は、法律で禁止されています。
以下でその罪について御説明致します。
・犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)違反
銀行や信用金庫で発行される通帳やキャッシュカードは、名義人以外が使用することを禁止しています。
これに反して他人にキャッシュカードを渡したり、他人から受け取ったキャッシュカードを使用する行為は犯収法に違反する行為です。
ケースの場合はキャッシュカードを譲り渡していることになるため、犯収法28条2項が問題となります。
犯収法28条1項 他人になりすまして…預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報…を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
同2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。(略)
・詐欺罪
上記の他に、ケースのAは相手から言われるがままに銀行や信用金庫に行って新規で口座を開設する、という行動を採っています。
このように自分で利用しないという事実を隠して銀行口座を開設する行為は、詐欺罪に当たる可能性があります。
銀行口座は登録者が利用することを前提としていますので、登録者以外の者が使用する可能性がある場合に銀行は銀行口座を開設させません。
他人に売買するという目的を隠して銀行口座を開設する行為は銀行や信用金庫などを騙してキャッシュカードや通帳を受け取る行為になりますので、詐欺罪が成立する可能性があります。(刑法246条)
【キャッシュカードを送った場合には弁護士に相談を】
キャッシュカードを送ったことで問題になる場合については、ケースのように騙されたと気が付いて警察署に被害を申告したところ逆に被疑者として扱われたり、銀行から「預金口座等に係る取引の停止等の措置の実施について」といった書類を受け取ったりすることで、事件が発覚します。
神奈川県横浜市港南区にて、キャッシュカードを送ったり売ったりしてしまい犯収法違反や詐欺罪で取調べを受ける予定がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で御相談を受けることができます。