架空の出張費請求が勤務先に発覚して詐欺事件
- 2021年4月21日
- コラム
架空の出張費請求が勤務先に発覚して詐欺事件
今回は、架空の出張費請求が勤務先に発覚して詐欺事件に発展しそうなケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説いたします。
~ケース~
神奈川県横浜市港南区に住むAさんは、勤務先のV会社に対し、出張をしていないにも関わらず、出張をして交通費等を支出したなどと称して出張費の支給を受けていたところ、ついに前記不正行為が発覚し、会社から事情聴取を受けることになりました。
Aさんが不正に支給を受けた出張費等は総額で100万円を超える見込みです。
V会社は「懲戒解雇は免れない。ただし、返済さえしてくれれば神奈川県江南警察署に被害届は出さない」と言っていますが、本当に被害届を出されないか、刑事事件化しないかが不安です。
Aさんはどうすればよいのでしょうか?
(フィクションです)
~Aさんに成立する犯罪~
まずは、今回Aさんに成立しうる犯罪について検討してみましょう。
(詐欺罪)
Aさんは、出張をしていないのにも関わらず、出張をし、交通費等が生じたなどと称することにより、V会社に交通費等の支給の必要が生じたと誤信させ、交通費等の支給を受けています。
上記行為は、「詐欺罪」(刑法第246条)を構成する可能性の高い行為です。
詐欺罪の法定刑は、「10年以下の懲役」となっています。
(私文書偽造(変造)罪・偽造(変造)私文書等行使罪)
また、Aさんは交通費等を請求するために、領収書などの書類を偽造し、V会社の担当者に示しているかもしれません。
その場合は、「私文書偽造罪」(刑法第159条1項、3項)、「偽造私文書等行使罪」(刑法第161条)に問われます。
私文書偽造行為を行うにあたって、「他人の印章若しくは署名」を使用したり、あるいは偽造した「他人の印章若しくは署名」を使用した場合には、「有印私文書偽造罪」が成立することになります。
無印偽造等の場合(刑法第159条3項)と比べて法定刑が重くなりますが、領収書を偽造した場合には、ほとんどの場合「有印私文書偽造罪」の成否が検討されることになるでしょう。
~V会社と示談がまとまらない場合はどうなるか?~
V会社は「返済されれば被害届は出さない」と述べていることから、反対に、返済できなければ神奈川県港南警察署などに被害届を提出されてしまうおそれがあると考えられます。
被害届を提出されれば、Aさんは詐欺事件などの被疑者として捜査されることになるでしょう。
また、Aさんが不正に取得した金額が100万円を超える見込みであることから、逮捕などによって身体拘束されその身体拘束が長期化したり、起訴されてしまう可能性も十分考えられます。
さらに、有罪判決を受けた場合には、初犯であっても執行猶予がつかない可能性も存在します。
~弁護士を依頼し、V会社と示談をする~
V会社は刑事事件化については比較的消極的なようなので、不正に支給を受けた交通費等を返済すれば穏便に事件を解決できる可能性が見込めます。
ただし、後の蒸し返しや、その他のトラブルを回避するためには、AさんとV会社との間に弁護士を入れて示談交渉を行うことをおすすめします。
弁護士に示談交渉を行ってもらうことにより、不当な条件を受諾することや、紛争の巻き返しのきっかけとなる原因を排除することができます。
また、Aさん本人がV会社と交渉しなくてもすむので、負担が少なくてすみます。
無事に示談が成立すれば、示談書を作成します。
適切な示談書を作成することにより、紛争の巻き返しの予防、刑事事件化の予防を図ることができるでしょう。
もっとも、「適切な示談書」がどのようなものかはケースバイケースという他ありません。
弁護士は法律の専門家ですから、事件に応じた適切な示談書を作成する能力に長けています。
通常、弁護士に示談交渉を依頼すれば、示談が成立した際に、示談書を作成してもらえる場合がほとんどかと思われます。
疑問点があれば、示談交渉を依頼した弁護士に示談書の作成についても尋ねてみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
勤務先から不正に出張費用の支給を受けてしまい、刑事事件化を防ぎたい、示談交渉を検討したいとお悩みの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。