暴走運転行為が危険運転致死傷罪に
- 2021年7月3日
- コラム
暴走運転行為が危険運転致死傷罪に
暴走運転行為が危険運転致死傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説いたします。
~ケース~
21歳のAさんは深夜、友人3名とともに、神奈川県秦野市内の路上で自動車を運転していました。
走行していたのは一般道で、時速50キロメートル制限の道路でしたが、Aさんは時速130キロメートルで自動車を運転しており、この時間帯であれば交差点に車は来ないであろうと考え、赤信号が表示されていた交差点にそのまま進入してしまいました。
すると、青信号に従い交差点に進入してきたⅤさんの車の右側面に衝突してしまい、Ⅴさんは即死しました。
Aさんの友人ら3名も重軽傷を負っています。
事故の当事者は全員病院に搬送され、神奈川県秦野警察署はAさんの回復を待ち、危険運転致死傷罪の疑いで逮捕する方針です。
(フィクションです)
~危険運転致死傷罪とは?~
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条7号は、
・「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」を行い、
・「よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する」としています。
Aさんは、赤信号が表示されていることに気がつきながら、「この時間帯であれば交差点に車は来ないであろう」と考え、時速130キロメートルでそのまま交差点に進入しています。
さらに、Ⅴさんの運転する被害車両に衝突した結果、Ⅴさんを死亡させ、同乗者である友人にも重軽傷を負わせています。
Aさんによる交差点の侵入は「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し」たものと評価される可能性が高いと考えられます。
また、時速130キロメートルで交差点に進入すれば、適切に事故を回避する操作を行うことが極めて困難であることから、「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」と判断される可能性が高いでしょう。
上記の事実関係によれば、Aさんに危険運転致死傷罪が成立する可能性が高いと考えられます。
~今後の捜査はどうなる?~
今のところAさんは逮捕されていませんが、警察はAさんの回復を待って逮捕する方針であり、裁判官から令状が発付されれば逮捕されることになるでしょう。
また、危険運転致死傷罪がかなり重い犯罪であることを考慮すると、勾留、勾留延長がなされ、身体拘束が長期化する可能性が見込まれます。
そのため、早期に弁護士へ事件解決を依頼することが強く推奨されます。
どのくらい早く弁護活動の依頼をすべきか、という疑問をお持ちの方もおられますが、被害者との示談交渉に着手しなければならないこと、身元引受人の用意をしなければならないことを考慮すると、逮捕前の段階で選任しておくのがよいでしょう。
逮捕前に選任しておくことにより、逮捕された後の弁護活動の準備もできます。
~起訴された後の弁護活動~
危険運転致死傷罪は起訴される可能性が高く、Aさんは裁判にかけられてしまうことになるでしょう。
なお、危険運転致死罪については、裁判員裁判対象事件となります(裁判員法第2条1項2号)。
Aさんは時速50キロメートル制限の道路を時速130キロメートルで走行しており、相当に速度超過して運転しています。
その結果、1名が亡くなり3名が重軽傷を負っており、有罪が言い渡される場合には、実刑判決となる可能性が極めて高いです。
執行猶予付き判決の獲得はかなりハードルが高いため、なるべく刑務所で服役する期間を短くする弁護活動が重要となるでしょう。
そのためには、誠心誠意、被害者の遺族に謝罪し、賠償を行う必要が出てくるでしょう(極めて高額な示談金を支払うことになる可能性が高いですが、任意保険などによりカバーできれば、十分な賠償を行うことができる場合もあります)。
また、自動車を処分し、二度と自動車を運転しないことを法廷で誓うなど、反省していることや再犯防止のためにしていることなどを証拠化したり主張したりすることも考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご自身、またはご家族が危険運転致死傷事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。