執行猶予中の再犯
- 2021年8月4日
- コラム
執行猶予中の再犯
執行猶予中の再犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
~事例~
Aさんは、神奈川県鎌倉市のコンビニに交際相手と入店し、交際相手に気付かれずに商品2点をカバンに入れて万引きしました。
店を出たところで、コンビニの店員に声を掛けられましたが、Aさんは容疑を否認していました。
しかし、その後容疑を認めたAさんは、現場に駆け付けた神奈川県鎌倉警察署の警察官に窃盗罪の容疑で逮捕され、そのまま神奈川県鎌倉警察署へ連行されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、Aさんが窃盗罪で執行猶予中であるため、どうにか実刑を避けることができないものかと思い、すぐに刑事事件専門弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
窃盗の量刑
刑法犯の認知件数の大半を占めるのは窃盗で、手口別では窃盗に占める万引きの割合は高くなっています。
万引きは、他の窃盗事犯と比べると、被害額も小さく、比較的軽微な犯罪とされています。
そのため、初犯であれば、微罪処分で事件が処理され、警察での取調べを1回受けて終了となることがほとんどです。
しかし、万引きは再犯率が高く、何度も万引きを繰り返してしまうケースが少なくありません。
事案によっても異なりますが、それほど被害額が大きくなく、被害品の買取や被害弁償が済んでいる場合には、2~3回目の検挙で不起訴処分、それ以上であれば、検察官が起訴を選択することになります。
起訴される場合であっても、窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、罰金刑があるため、略式起訴を選択して裁判所に罰金を求めることが多くなっています。
略式起訴されて、略式手続に付される場合は、公開の法廷で審理されることはありません。
ただ、略式起訴されて略式命令を言い渡された場合、例え、法廷に立たなくても、有罪判決を受けたことには変わりありませんので、前科が付くことになります。
そして、前科がある者が再び万引きをすると、検察官は、略式起訴ではなく、公判請求を選択し、裁判所に対して懲役刑を求めます。
初めて万引きで起訴(公判請求)された場合、判決では執行猶予付きの懲役刑が言い渡されるのが通例です。
執行猶予が付けば、判決が言い渡されてすぐに刑務所に入らることはなく、一定期間問題なく過ごせれば、刑の言渡しは効力を失います。
換言すれば、「一定期間問題なく過ごせれば」という条件付きの制度ですので、執行猶予期間中に再び罪を犯せば、執行猶予が取消され、懲役刑が執行され、刑務所に収容されることになります。
万引きのケースも例外ではなく、執行猶予期間中に再び万引きをして起訴された場合、懲役の実刑が選択され、前刑の執行猶予も取消されるので、2つ合わせて服役することになるのが原則です。
ただ、例外的に、執行猶予期間中に犯罪を犯した場合であっても、保護観察に付されていない場合で、かつ、新たに犯した罪について、1年以下の懲役又は禁錮刑であり、情状に特に酌量すべきものがある場合に限って、新たに犯した罪について再度刑の全部の執行猶予が付与され、前回の罪についての刑の全部の執行猶予が取消されないことがあります。
これが「再度の執行猶予」と呼ばれるものです。
基本的には、執行猶予中に同種万引き事件を起こして起訴されると、懲役の実刑が言い渡されることになります。
また、保護観察中の同種万引き事件で起訴されると、その執行猶予期間中に判決が言い渡される場合には、例外的にも執行猶予を付けることはできません。
しかしながら、例外的に、再度の執行猶予の要件を満たす場合には、再び執行猶予となり、刑務所に収容されることを回避することができます。
例外というように、再度の執行猶予が認められるケースはそう多くはありませんが、窃盗症(クレプトマニア)等の精神疾患が万引きに大きく影響していると認められるような場合には、再度の執行猶予となることがあります。
事案によって再度の執行猶予を狙える見込みがあるか否かは異なりますので、まずは刑事事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
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