検察審査会とは?
- 2022年9月7日
- コラム
検察審査会とは?
強制性交等事件がどのような罪に当たるのかという問題と検察審査会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説いたします。
【ケース】
神奈川県相模原市緑区在住のAさんは、相模原市緑区在住の会社経営者です。
Aさんの下で働く21歳の従業員Vさんは、Aさんに対し「仕事の悩みがあるから休日に相談を受けてくれないか」と言い、休日にAさんの自宅を訪問しました。
その際、VさんがAさんに擦り寄るような行動を見せたため、Aさんは性的な行為に対する同意があると考え、Vさんの口に陰部を入れたり、肛門に陰部を入れたりする性的な行為に及びました。
後日、Aさんの自宅に相模原市緑区を管轄する相模原北警察署の警察官が来て、「VさんがAさんから無理やり性交等をされたという強制性交等事件で被害届が出ているから任意同行に応じてください。」と言われ、Aさんはその後数回、相模原北警察署や横浜地方検察庁相模原支部に赴きましたが、Aさんは同意があったと主張し、最終的に不起訴という結果になりました。
Vさんは事件後すぐにAさんの会社を退職しました。
その数年後、Aさんのもとに検察審査会というセクションから連絡が入り、話が聞きたいので出頭してほしい旨言われました。
Aさんは検察審査会がどのようなものか知るため、刑事事件専門の弁護士に相談をしました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【強制性交等事件について】
強制性交等罪は、平成29年に施行された改正刑法以前は強姦罪と呼ばれていた罪で、条文は以下のとおりです。
刑法177条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
強制性交等罪が成立する場合とは、
①
・13歳以上の者に対して
・暴行又は脅迫を用いて
・性交/肛門性交/口腔性交
②
・13歳未満の者に対して
・性交/肛門性交/口腔性交
をした場合です。
②については、要するに13歳未満に対し上記行為をした場合には同意の有無に関わらず強制性交等罪として処罰されることになるのです。
今回の事例ではVさんの年齢を21歳としていますので、①の要件を満たした場合に強制性交等罪が成立します。
Aさんの立場としては、性交はしたが同意があったという主張です。
他方でVさんの立場としては、暴行は又は脅迫によって抵抗できないような状況下で性交をされたという主張になると考えられます。
なお、ケースではVさんの性別を決めていません。
強制性交等罪の要件は性交に限らず、肛門性交や口腔性交(陰茎を無理やり口に入れる行為)も対象となるため、被害者は女性に限らず男性も対象となり得ます。
【検察審査会について】
刑事事件を起こした疑いのある被疑者に対し、起訴するかどうかを判断できるのは検察官だけです。
捜査担当検察官が被疑者を起訴しない「不起訴」の判断を下した場合、被疑者は起訴され刑事処罰を科されることなく事件は終了します。
(もっとも、担当検察官は上司の決裁を経て起訴されるため、慎重に判断されています。)
検察審査会は、検察官が不起訴処分とした被疑者について、不当と思われる場合の救済制度です。
検察審査会法1条1項では、「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図る」目的で、「政令で定める地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に検察審査会を置く」とされています。
検察審査会の構成員は、衆議院議員選挙の選挙権がある18歳以上の一般の方から選出された11人です。
被害者や告訴人等のうち不起訴処分に不服をもつ者からの申立てを受けた場合に、事件記録を調べたり証人を出席させて質問をしたりして、改めて不起訴処分の妥当性について検討します。
審査の結果は以下のいずれかとされます。
・不起訴相当:不起訴処分は相当であったという判断
・不起訴不当:改めて捜査を行う必要があるという判断
・起訴相当 :起訴するだけの証拠があり、起訴するべき事案であると判断
検察審査会からの連絡が来た場合、そのまま不起訴相当という判断で終了する場合もありますが、追加の捜査が行われて起訴される恐れがあります。
神奈川県相模原市緑区にて、強制性交等罪で一度不起訴処分になったものの、時間が経った後検察審査会から連絡が来たという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご連絡ください。
弁護士が当時の捜査状況や必要に応じて証拠書類を検討した後、検察審査会での見通しについてご説明いたします。