鉄道の線路内に立ち入る行為
- 2023年5月17日
- コラム
鉄道の線路内に立ち入る行為
報道事例をもとに、鉄道の線路内に立ち入ることで問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【参照事例】
13日夕方、神奈川県小田原市のJRの踏切近くの線路内にカメラを持った10人ほどが立ち入り、東海道線が一時、運転を見合わせました。
多くの鉄道ファンが撮影に訪れるところだということで、警察がいきさつを調べています。
13日午後5時半ごろ、小田原市江之浦の「江ノ浦踏切」の近くの線路内に10人ほどがいるのを回送列車の運転士が見つけ、列車を止めました。
列車と接触した人はおらずけが人はいませんでしたが、JR東海道線は踏切の近くの区間で20分ほど運転を見合わせました。
JRから通報を受けた警察によりますと、立ち入ったのはカメラを持った10人ぐらいで、踏切の近くに荷物が置かれていたということです。
ただ、警察が現場を訪れたころには誰もいなかったということで、警察がいきさつを調べています。
「江ノ浦踏切」の近くに住む住民によりますと、踏切の近くにはトンネルが2つあり、その間を走ったり踏切の間近を走ったりする列車を撮影することができ、休日には多くの鉄道ファンが訪れるということです。
過去には、鉄道ファンが線路付近に立ち入って列車をとめたこともあるということです。
住民は、NHKの取材に対して「きょうも30人から40人ぐらいの鉄道ファンが近くを歩いているのを目撃しました。踏切の近くにパトカーが止まっていたので何かあったのかなと思っていました」と話していました。
【線路に立ち入る行為】
今回の事件で問題となっているのは、鉄道の線路内に被疑者らが侵入した行為です。
鉄道の線路に侵入した場合に問題となる罪としては、
・鉄道営業法違反
・威力業務妨害罪
・往来危険罪
が挙げられます。
関連条文は以下のとおりです。
<鉄道営業法違反>※原文は片仮名です。
鉄道営業法37条 停車場其の他鉄道地内に妄に立入りたる者は十円以下の科料に処す
<威力業務妨害>
刑法234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
(刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。)
<往来危険>
刑法125条1項 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。
まず、鉄道営業法については、線路は鉄道地ということができるため、遮断している踏切内に入る行為はこの条文に該当すると考えられます。
法定刑は科料(1000円以上1万円未満の財産刑)ですので、軽い罪であると言えますが、捜査が行われることに変わりなく、科料が言い渡された場合はいわゆる前科として扱われます。
次に、威力業務妨害罪について、例えば初めから走行中の車両を停車させる目的で線路に立ちふさがるような行為であればこの罪が成立すると考えられます。
しかし、踏切内に侵入したからと言ってすぐに威力業務妨害罪に問われるかは微妙で、車両を撮影することを目的に侵入したときに「それにより列車が停車せざるを得なくなるかもしれないが構わないだろう」という認識で侵入した場合など、故意、あるいは未必の故意が認められる場合にのみ成立すると考えられます。
また、往来危険罪についても威力業務妨害罪と同様に故意の評価が難しく、例えば線路を跨ぐ状態で三脚を置いていた、あるいは停車した列車を撮影する目的で線路にブロックを置いた、などの行為が認められれば列車の往来に危険を生じさせたと評価されますが、敷地内に侵入したからといって直ちに往来危険罪が成立するという訳ではありません。
【弁護士へ相談】
今回の報道について、通報を受けた警察官が臨場した時点で被疑者らはいなかったようです。
しかし、昨今は街中に防犯カメラがあることに加え、トラブル等が発生した場合にはスマートフォン等を用いて犯行現場を撮影する目撃者の方も多くおられることから、被疑者が特定され捜査される可能性があります。
実際に、列車を撮影するために線路に立ち入った者が鉄道営業法違反で捜査される事例が各地で報道されています。
また、鉄道会社は損害を受けるため、多額の賠償金を請求されるおそれもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、鉄道の線路内に侵入し鉄道営業法違反で捜査を受ける場合の法律相談を無料で受け付けています。
ご予約は0120-631-881(24時間365日予約対応)まで。