あおり運転について
- 2021年1月5日
- コラム
あおり運転について
いわゆるあおり運転・妨害運転をした場合に問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市多摩区在住のAは、川崎市多摩区内の会社に勤める会社員です。
ある日Aは川崎市多摩区内の公道を車で走行していたところ、前方を車で走行していたVが急ブレーキをかけてたために、Aも慌てて急ブレーキを踏み、接触事故を免れました。
Aはその急ブレーキに腹が立ち、前方を走行中のVの車両を追い越し際に幅寄せをし、更には前方に回り込んで蛇行運転したり急ブレーキをかけたりして、Vの進行を妨害しました。
Vの車の同乗者はAによるあおり運転を受けて通報したため、川崎市多摩区を管轄する多摩警察署の警察官が臨場し、両車両を停車させ双方の話を聞くこととなりました。
Aは、警察官から在宅で捜査を進めると言われて安心していましたが、略式手続などで前科が付く可能性について知り刑事事件を専門とする弁護士に無料相談を受けることにしました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【あおり運転について】
2017年の6月、東名高速道路にてあおり運転の結果追い越し車線で停車させられた被害者の方が、後続車両に追突されて死亡してしまったという痛ましい事件が発生したことで、あおり運転という行為が社会問題となりました。
当時の法律ではあおり運転を直接取り締まることが容易ではなく、急ブレーキの禁止や車間距離保持義務違反などの道路交通法上の条文のほか、刑法の定める暴行罪で処罰されていました。
しかし、上記事件の報道による世論の後押しもあり、道路交通法と危険運転処罰法がそれぞれ改正され、あおり運転を想定した妨害運転を新たに設けました。(2020年6月30日施行)
以下で、あおり運転・妨害運転罪がどのような場合にどのような罪に当たるのか、見ていきます。
①自動車等の妨害をした(道路交通法違反)
基本的に、あおり運転で行われる行為は急ブレーキの禁止や車間距離保持義務違反、警音器(クラクション)の使用違反などの道路交通法に規定されている違反行為に当たります。
これらの行為は、交通反則通告制度(いわゆる青キップ)で処理されることが一般的です。
ただし、これらの行為を「他の車両等に道路に置ける交通の危険を生じされる恐れのある方法」で違反を起こした場合には、交通反則通告制度の手続きではなく、妨害運転罪というかたちで刑事事件として取り扱われます。
道路交通法117条の2の2 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
11号 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第十七条(通行区分)第四項の規定の違反となるような行為
ロ 第二十四条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第二十六条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第二十六条の二(進路の変更の禁止)第二項の規定の違反となるような行為
ホ 第二十八条(追越しの方法)第一項又は第四項の規定の違反となるような行為
ヘ 第五十二条(車両等の灯火)第二項の規定に違反する行為
ト 第五十四条(警音器の使用等)第二項の規定に違反する行為
チ 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第七十五条の四(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第七十五条の八(停車及び駐車の禁止)第一項の規定の違反となるような行為
②自動車等を妨害して停車させた場合など(道路交通法違反)
①で見たあおり運転以上に深刻な場合には、より厳しい刑罰が科せられます。
具体的には、高速道路で「他の自動車を停車させ」たり「著しい交通の危険を生じさせ」たりした場合には、①の3年以下の懲役又は50万円以下の罰金より重い、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される可能性があるのです。
道路交通法117条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
6号 次条第十一号の罪を犯し、よつて高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者
③妨害により被害者が死傷した(危険運転処罰法違反)
あおり運転と呼ばれる妨害運転の結果被害者が死傷した場合には、道路交通法ではなく自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(通称、自動車運転処罰法)に違反します。
条文は以下のとおりです。
自動車運転処罰法2条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
4 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5 車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
あおり運転・妨害運転による刑事事件について取り扱っています。
神奈川県川崎市多摩区にて、御家族があおり運転による妨害運転罪などで捜査を受けている場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。