アポ電強盗で裁判員裁判に
- 2020年12月20日
- コラム
アポ電強盗で裁判員裁判に
いわゆるアポ電強盗に携わったものの捜査機関による捜査により逮捕され、裁判員裁判になる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市麻生区在住のAは、川崎市麻生区内でアルバイトをしていました。
しかし、昨今の情勢によりアルバイト先が休業に陥り、A自身も事実上解雇され仕事を失いました。
そこで、Aは生活費を稼ごうと思い、未成年者を含む後輩2名とともに川崎市麻生区内に住む方に片っ端から連絡をし、自宅に現金がある家を探しました。
そして、自宅に現金を置いているVの情報を掴み、3名でV宅に行きました。
Aらは当初宅配業者を装いV宅に行き、Vが鍵を開けた瞬間に3名が押し入り、Vを縛り上げて現金のありかを聞き、答えないVを持参したバールで殴り怪我をさせました。
結局、暴行や脅迫によりVから現金のありかを聞き出したAらは、その金を持って逃走しました。
川崎市麻生区を管轄する麻生警察署の警察官は、Aについてアポ電強盗をしたうえ被害者が怪我をしているとことから強盗傷害罪で通常逮捕しました。
逮捕後、Aの家族は接見に行った弁護士から、アポ電強盗は裁判員裁判になる可能性があると説明を受けました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【アポ電強盗について】
まずはアポ電強盗の手口について確認します。
報道などによりご存知の方も多いことと思いますが、アポ電強盗の場合、被疑者らは
・電話で自宅に現金があるかどうかを確認
・現金があると分かった場合にその家に赴き
・宅配業者などを装い被害者に鍵を開けさせ
・数人がかりで被害者を縛り付けるなどして抵抗させないようにし
・自宅にある現金を奪っていく
というもののようです。
事前に現金が家にあるのかを確認する、現金などの足が付きにくいものを狙う、留守中を狙うのではなくあえて在宅中に押し掛けることで現金のありかをすぐに確認する等、短時間で行われる点に犯罪の特徴が見られます。
しかし、当然このような行為は強盗事件になります。
強盗事件は強盗罪に問われます。
強盗罪は、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」することで成立する罪です(刑法236条1項)。
強盗罪の法定刑は「五年以上の懲役」となっているため、裁判になった場合には5年から20年の懲役刑を言い渡します。
さらに、ケースのAらは、強盗をする際にVに怪我をさせています。
強盗の際に被害者を怪我させた場合、怪我をさせることについて故意があれば「強盗傷害」に、強盗の結果被害者に怪我をさせてしまった場合には「強盗致傷」という罪に、それぞれ当たります。
強盗致傷や強盗傷害の場合、強盗罪より重い「強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役」と定められています(刑法240条)。
【裁判員裁判について】
裁判員裁判は、職業裁判官3名と裁判員候補名簿に掲載された一般の方から選ばれた6名の裁判員とで合議を組み、有罪か無罪かの判断や有罪の場合の量刑を検討し言い渡す制度です。
裁判員裁判はどのような事件でも対象になるわけではなく、①死刑、無期懲役・禁錮のいずれかに該当する罪を犯した場合と、②①以外の法廷合議事件(裁判所法26条2項2号)のうち故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪、が該当します。
ケースは強盗傷害事件で、先述のとおり強盗傷害事件の法定刑は「無期又は六年以上の懲役」ですので、①に当たります。
その他、①に当たる事件としては殺人罪や通貨偽造罪、強制わいせつ致死、営利目的の覚醒剤輸入などが、②には危険運転致死罪や傷害致死罪などが挙げられます。
裁判所ホームページ掲載の司法統計によると、2019年の1年間に行われた裁判員裁判は1,001件です。
うち強盗致傷と強盗傷害で有罪判決を受けた者は205件で、全部執行猶予の事案は35件しかありません。
神奈川県川崎市麻生区にて、御家族がアポ電強盗による強盗傷害や強盗致傷などの裁判員裁判対象事件で逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。