微罪処分とは
- 2020年11月20日
- コラム
微罪処分とは
~事例~
Aさんは横浜駅周辺の駐輪場に無施錠で駐輪されていた自転車を見つけて、錆も結構ついていた自転車だったので、持ち主が放置していった自転車だろうと思い、乗って帰ることにしました。
しかし、すぐに警察官から職務質問を受け、他人の自転車であることが発覚したため、神奈川県戸部警察署横浜駅東口交番で事情聴取を受けることになりました。
Aさんは素直に他人の自転車に乗っていたことを認めており、警察官からは「今回は微罪処分になると思うけど、二度とこんなことはしないように」と言われて帰宅を許されました。
「微罪処分」とはどのような処分なのか、罪に問われるのか不安になったAさんは、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の無料法律相談を受けることにしました。
≪フィクションです。≫
・微罪処分とは
警察官が犯罪を認知して捜査をした場合、事件を検察官に送致することになっています(刑事訴訟法246条本文)。
しかし、犯罪にも重いものから軽いものまで多々あり、それら全てを検察官に送致していると、検察官の数にも限りがあるため、検察官の処理能力を上回ってしまい、適切な処分が下せなくなってしまうおそれがあります。
そこで、捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、警察は検察官に事件を送致しないことができることになっています(刑事訴訟法246条但書、犯罪捜査規範198条)。
このような犯罪が軽微である場合に検察官に事件を送致しない措置のことを「微罪処分」と呼んでいます。
・微罪処分の要件
微罪処分として検察官に送致しないことができる事件は、①犯罪事実が極めて軽微、かつ、②検察官からあらかじめ指定された事件です。
実際には、各都道府県にある地方検察庁の最高責任者である検事正が、特定の極めて軽微な「微罪事件」を指定し、取り扱いの基準を指示しています(刑事訴訟法193条1項)。
したがって、どのような事件が「微罪処分」の対象となるかについては、各地方検察庁の管轄区域によって違いがあるということになります。
・微罪処分が適用される事件
上述のように微罪処分の対象となるか否かの基準は各地方検察庁の管轄地域によって違いがありますが、概ね以下のような事件について微罪処分の対象となっています。
①窃盗、横領、暴行などのうち被害が軽微なもの
②同種の前科・前歴がないこと
③常習性がないこと
④被害回復もしくは被害者が処罰を望んでいないこと
⑤逮捕や告訴、告発がなされていないこと
・微罪処分となった場合の処理
警察が捜査した結果、微罪処分の対象となる事件であり、微罪処分とする場合には、その事件は検察官に送致されないことになります。
もっとも、検察官に事件の送致は行われなくても、一月ごとに一括して微罪処分とした事件の内容(被疑者の氏名等の個人情報や処理年月日など)を検察官に報告することになっています。
したがって、検察官は報告された事件について改めて立件して起訴することは可能ですが、基本的に改めて立件することはないため、微罪処分となった場合には起訴されることはないと考えることができます。
・警察官から微罪処分となると言われた場合
警察から微罪処分となるだろうと言われた場合、多くの場合には実際に微罪処分となって罪に問われることはないでしょう。
しかし、その後の捜査の結果、微罪処分の対象事件でないことが判明したり、対象事件であったとしても必ず微罪処分となるわけではないことに注意が必要です。
微罪処分となると言われた場合でも、その言葉を信用してもよいのか、専門家の意見を聴くことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、刑事事件に強い弁護士が、さまざまな角度から事件の内容を分析し、処分の見通しをお伝えさせていただきます。