治療に乗じた準強制わいせつ事件で逮捕
- 2021年10月9日
- コラム
治療に乗じた準強制わいせつ事件で逮捕
治療に乗じた準強制わいせつ事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
【刑事事件例】
Aさんは、横浜市旭区内で接骨院を経営していました。
ある日、Aさんは、治療を受けにきた女性客Vさん(30代)に対し、治療に乗じて胸や下半身を触るなどのわいせつ行為をしました。
Aさんの行為を不審に思ったVさんは、神奈川県旭警察署に被害を届け出ました。
捜査の結果、神奈川県旭警察署の警察官は、Aさんを準強制わいせつ罪の容疑で逮捕しました。
(2020年10月21日に茨城新聞クロスアイに掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)
【準強制わいせつ罪の成立の可否】
Aさんは、治療に乗じて胸や下半身を触るなどのわいせつ行為をしています。
このAさんのわいせつ行為は、準強制わいせつ罪にあたる可能性があります。
以下では、準強制わいせつ罪の成立の可否について、検討していきます。
刑法178条は、準強制わいせつ罪を規定しています。
刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
刑法178条が準用する176条は、強制わいせつ罪を規定しています。
刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法178条(準強制わいせつ罪)の「第176条の例による」という表現は、刑法176条(強制わいせつ罪)に定められた刑に処するという意味です。
すなわち、準強制わいせつ罪を犯した者には、刑法176条(強制わいせつ罪)で規定されている「6月以上10年以下の懲役」が科せられることになります。
それでは、以下では、準強制わいせつ罪が成立する具体的な要件(構成要件)を考えていきます。
刑法178条(準強制わいせつ罪)の「心身喪失」「心神を喪失」といった表現は、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態を意味します。
例えば、失神状態や泥酔状態にある場合が挙げられます。
また、刑法178条(準強制わいせつ罪)の「抗拒不能」という表現は、心理的又は物理的に抵抗が著しく困難である状態を意味します。
例えば、治療行為にためにわいせつな行為が必要と誤信している状態を指します。
刑事事件例では、Vさんは正常な治療行為が行われると考えており、わいせつ行為が行われるとは認識していなかったのにもかかわらず、Aさんは治療行為を装いVさんにわいせつな行為をしています。
このような事情からすれば、Vさんは心理的・物理的に抵抗が著しく困難である状態、すなわち刑法178条(準強制わいせつ罪)の「抗拒不能」状態にあったと考えられます。
そして、刑法178条(準強制わいせつ罪)の「わいせつな行為」という表現は、性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を意味します。
少々難解な言い回しがされていますが、刑事事件例のAさんによるVさんの胸や下半身を触る行為は、刑法178条(準強制わいせつ罪)の「わいせつな行為」にあたると考えられます。
以上より、Aさんには準強制わいせつ罪が成立すると考えられます。
Aさんを準強制わいせつ罪の容疑で逮捕した神奈川県旭警察署の警察官もそのように考えたのだと推測されます。
【準強制わいせつ事件で逮捕されてしまったら】
準強制わいせつ事件で逮捕されてしまった場合、速やか釈放されるよう刑事弁護活動を行うことが必要です。
弁護士としては、基本的には、①検察官による勾留請求前、②裁判官による勾留決定前、③裁判官による勾留決定後という3つの異なる時期に、Aさんの身柄の釈放を求めることができます。
しかし、もちろん管轄地域ごとに差異はありますが、検察官による勾留請求・裁判官による勾留決定はともに、Aさんの身柄が検察官に送られたその日のうちになされることが多いです。
とすると、弁護士としては、検察官にAさんの身柄が送られたその日に、速やかにAさんの釈放を求める刑事弁護活動を行わなければなりません。
準強制わいせつ罪を含め、刑事事件は迅速な対応が大変重要となりますので、準強制わいせつ事件で逮捕されてしまったら、速やかにお近くの刑事弁護を取り扱う法律事務所へご相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
治療に乗じた準強制わいせつ事件で逮捕された場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部までご相談ください。