脱税事件で逮捕?
- 2021年2月28日
- コラム
脱税事件で逮捕?
売り上げの過少報告や除外など、いわゆる脱税をした場合の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県大和市在住のAは、大和市内のとある飲食店(法人)の経営者という立場です。
Aは4年ほど前から、ありもしない取引があったように見せかけ、数百円~数十万円の間での領収書を作成し、それを経費として計上していました。
当然Aも法人として法人税の確定申告を行う必要がありますが、Aはその架空経費を計上し、税引前純利益を本来より少なく申告していました。
この脱税行為を知った従業員の1人は、大和市内にある税務署に行き、Aの脱税行為についてリークしました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【脱税事件での手続】
そもそも、我が国では憲法29条1項で「財産権は、これを犯してはならない。」と定められています。
そのため、基本的に稼いだお金は自由に使うことができます。
その一方で、憲法30条に「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と定められています。
これにより、国民が法律に従い納税するという義務を定めているのです。
この義務に反して税金を納めない、あるいは定められた金額より少ない税金しか納めないという行為は、俗に脱税と呼ばれるもので、所得税法・法人税法などの特別法のほか、税務署などを欺く行為として詐欺罪が適用される、立派な犯罪です。
ただし、報告し忘れていた資産等があり、故意(わざとでは)なく税金を少なく収めていた場合などは、単なる申告漏れとして脱税には当たりません。
脱税事件の場合、一般の刑事事件とは異なる手続で進められるほか、一般の事件では用いられない用語があります。
一般的な刑事事件では警察官が捜査を行いますが、脱税事件は、基本的に警察官ではなく国税局又は税務署が取り扱います。
国税局と税務署はどちらも同じ財務省内にある組織ですが、位置付けとしては国税庁の下に国税局があり、その下に税務署があるかたちです。
(我々一般の法人あるいは個人が確定申告などで訪れる場所は基本的に税務署です。)
・税務調査
税務署の職員が行う調査は、「税務調査」と呼ばれます。
税務調査は、納税額などが大幅に増減した場合のほか、定期的に行うこともある、単純な申告漏れなどを調査することを目的に行われるものです。
税務調査は、国税通則法74条の2以下で規定されている「質問検査権」に基づき任意で行われます。
そのため、税務調査が行われる場合、基本的に会社や税理士に連絡して調整したうえで調査を行うことが原則ですが、予め脱税を疑って行う調査の場合には事前連絡なしで行われることもあります。
なお、税務調査は任意であると説明しましたが、拒み続けたり嘘の回答をした場合には、刑事事件に発展することも考えられます。(国税通則法127条)
・査察調査
マルサの女などの映画で御存知の方もおられますが、国税査察官と呼ばれる各国税局(沖縄については沖縄国税事務所)査察部の職員が行う調査は、「査察調査」と呼ばれます。
査察調査は、国税通則法に基づいて行われます(平成30年施行以前は国税犯則取締法に規定。)。
査察調査は、犯罪調査と位置付けられていて、警察官が刑法犯などの被疑者に対して捜査を行う場合と似ています。
国税査察官は、脱税を疑われるような確定申告等の書類を見つけたり従業員等からの内部告発が行われた場合に、取引先や銀行口座等の入出金明細などを検査します。
そして、嫌疑が濃厚になった時点で、「強制調査」を行います。
強制調査は、警察官等が行う家宅捜索などと同じで、裁判所の令状を受けて行う調査です(国税通則法132条各項ほか)。
査察調査の対象となるのは、帳簿などの書類や隠し財産などがあり、必要に応じて差押えすることができます。
また、国税査察官には脱税等の事件に限り逮捕権を有する特別司法警察職員に該当するため、状況に応じて逮捕することもできます。
査察調査の結果、被疑者(犯則嫌疑者)の脱税についての証拠を固めた国税査察官は、管轄の検察庁に告発します。
告発を受けた検察官は、被疑者を(国に対する)詐欺罪や各種税法違反の嫌疑で起訴するか否かを判断します。
【脱税事件の実態】
国税局ホームページによると、令和元年度に査察調査を行うなどの捜査をして検察庁に告発した件数は116件で、脱税の総額は93億円にも上ります。
また、令和元年度中に脱税事件で判決を言い渡されたのは124件で、そのすべてで有罪判決が言い渡され、うち5人は実刑判決を受けています。
【脱税事件での弁護活動】
脱税事件を起こしてしまった場合、査察調査などを受ける前に修正申告をすることが望ましいです。
そうすることで、刑事事件化するリスクを下げることに繋がります。
脱税事件が査察調査などで発覚した場合でも、すぐに修正申告して追加分の納税を行うことが必要です。
査察調査が入った場合、すぐに修正申告したからといって刑事事件化されないというわけではありません。
まずは国税局や検察庁での取調べを受け、最終的に検察官が起訴するか否かの判断を下します。
もし起訴された場合、脱税に至った経緯や反省の弁等を法廷で主張する情状弁護を行い、より軽い刑の言い渡しを求めることになります。
一方で、脱税の嫌疑について不服がある場合、法廷で公訴事実について争う必要があります。
神奈川県大和市にて、脱税事件で査察調査が行われ検察官に告発される可能性がある場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で御相談を受けることができます。