営業で書類を偽造
- 2021年1月13日
- その他の刑法犯事件
営業で書類を偽造
営業の成績をごまかすために書類を偽造した場合の罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県南足柄市在住のAは、南足柄市内の会社で営業職に就いています。
Aの職場では営業職にノルマが定められていて、ノルマに達成しなければ所属班全員のボーナスがなくなってしまいます。
しかし、Aはその月のノルマに達成することができませんでした。
そこで、Aは南足柄市内の住人4人の氏名や住所、はんこ屋で購入したはんこを押印したうその契約書を作成し、会社に提出しました。
後日、Aの所属する会社から4人の家に請求書が送られ、身に覚えがなかった4人は南足柄市内にある松田警察署に、相談に行きました。
そこで、Aが書類を偽造していたことが発覚しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【文書の偽造について】
文書を偽造した場合にどのような罪に当たるかについては、その文書が「公文書」に当たるのか当たらないのか、その文書に押印がなされているかなされていないか、という点が問題となります。
公文書とは公務所や公務員が作成する書類を指します。
たとえば、運転免許証や健康保険証、住民票などの書類が挙げられます。
一方で私文書とは、公文書にはあたらないものの権利・義務を証明するような書類を指すもので、私人間で締結した契約書の他に、申請書や委任状などが挙げられます。
ケースについて見ると、Aは、4人には無断で、私人間で締結される契約書を作成しています。
また、契約に際してVの名字である印鑑を購入し、偽造した契約書に押印しています。
これは、いわゆる「てんぷら(架空契約)」と呼ばれる行為であり、有印私文書偽造罪に当たる可能性があります。
また、Aは自身が偽造した契約書をAの会社に提出しているため、有印私文書偽造罪のほかに偽造私文書行使罪が適用されることも考えられます。
偽造私文書行使罪は、自身で私文書を偽造していない場合でも、偽造した私文書を使った場合に成立する罪です。
ただし、自分で私文書を偽造してその偽造文書を使用する場合、文書の偽造と行使が牽連関係にあるとして有印私文書偽造罪だけで起訴されることになります。
その他、架空契約の事案ではお金の請求等がなされる場合もあり、その場合は詐欺罪や詐欺未遂罪が適用されることも考えられます。
<有印私文書偽造罪>
刑法159条1項 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
<偽造私文書行使罪>
同161条1項 前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
有印私文書偽造罪は罰金刑が用意されていないため、起訴された場合には必ず裁判になることになります。
また、5年以下の懲役と定められていることから3年以上の懲役を求刑される可能性もあります。
3年を超える懲役刑を言い渡された場合、執行猶予が付かないことから、実刑になる可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
神奈川県南足柄市にて、私文書偽造罪で捜査を受けているという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
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