不正乗車で書類送検①
- 2021年3月1日
- その他の刑法犯事件
不正乗車で書類送検①
鉄道等を利用する際に乗車区間の運賃を支払わない、あるいは少なく支払うなどの不正乗車を行った場合に問題となる罪と書類送検について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市保土ヶ谷区在住のAは、横浜市保土ヶ谷区内の会社に勤める会社員です。
Aは通勤に鉄道を利用しており、その通勤定期代金は職場が負担することとしています。
しかしAは、一度通勤定期券を購入して職場に定期券代金を振り込ませたのち、定期券を解約してそのお金を自分の懐に入れていました。
そして、通勤定期券がないにもかかわらず、鉄道を利用し、本来であれば交通系ICカードをかざしたり切符を入れたりすることで運賃を支払う必要があるにもかかわらず、それをせず、改札を通った人のすぐ後ろにピタッとついて前の人と一緒に通過することで、運賃を支払わずに通過していました。
事件当日も同じように改札を通過したところ、改札付近で待ち構えていた横浜市保土ヶ谷区を管轄する保土ヶ谷警察署の私服警察官が声をかけ、「今不正乗車しただろう」と言い、保土ヶ谷警察署に任意同行することになりました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【不正乗車の種類】
横浜市のような大都市では、通勤やレジャーなどで鉄道をはじめとする公共交通機関を利用する方は多いと思われます。
鉄道であればICカードや切符で、バスであればICカードや現金で、それぞれ運賃を精算することで利用する必要があるのですが、中には不正乗車する方もおられるようです。
しかし、不正乗車は犯罪であり、刑事罰に処される可能性があります。
以下で、不正乗車の種類について検討致します。
①いわゆるキセル乗車
キセルとは、喫煙器具の一種で、「吸い口」を口につけ、反対にある「雁首」に刻みタバコを入れることで吸うというものです。
キセルは「吸い口」と「雁首」が金属で出来ているのですが、両者をつなぐ管は竹などで出来ています。
その言葉から転じて、中間の運賃を支払わないという不正乗車をキセル乗車と呼ばれるようになったと言われています。
具体的な手法についてはあえて省略しますが、改札の入場及び退場のため、何かしらの切符を用いて行われます。
鉄道業界の取組によりキセル乗車ができないような状況にはなりつつありますが、最近でも、アイドルのコンサートに行くために新幹線に乗った際の運賃を支払わないキセル乗車をしたことで書類送検されたという報道がありました。
②改札の強行突破
ケースのAの場合、そもそも切符などを購入せず、鉄道に乗っています。
最近では無人の改札で有効な切符の挿入・ICカードをかざす行為で開く扉のようなゲートも多くありますが、これを前の人に続いて入ったり、潜り込むようにして入ったりする手口も考えられます。
③新幹線特急券・グリーン券を購入しない
御案内のとおり、我が国で鉄道を利用する際、JRや各私鉄のルールに基づき運賃とは別に特急料金等を追加で支払う必要があることがあります。
JRが運行する新幹線や特急、普通グリーン車や私鉄の特急等が挙げられます(私鉄の中には特急という名称だが特急料金を必要としない場合があります。また、JR九州の博多駅―南博多駅やJR北海道の一部区間等では、新幹線や特急に乗車しても運賃のみで良いとされている場合があります。)。
④偽の切符等を作成した
ICカードが主流となった現代では、偽の切符等での不正乗車は難しくなったと言えます。
しかし、以前は(あるいは地方鉄道の一部は現代でも)紙の定期券や乗車券を使用していることから、切符を偽造・変造して乗車するという不正乗車がありました。
現代ではあまり見られませんが、先日、国土交通省鉄道局職員が偽の「青春18きっぷ」を使って不正乗車をしたというニュースが報道されました。
⑤誤乗・折返し乗車
誤乗とは、正規の手段で乗車したものの寝過ごすなどして降りる駅を通り過ぎてしまうことを指します。
折返し乗車は、都区内などの列車が多く行き来し混雑する路線で、終点まで乗車して折返しを待つ行為です。
折返し乗車をする者の目的は、始発駅で座席に座って目的地まで行くことにあると考えられます。
誤乗も折返し乗車も、一度改札を出る必要があるところ、面倒・金が勿体ないなどを理由に改札を出ず、正規の運賃を支払わないのであれば、立派な不正乗車です。
⑥他人の定期券を使用した
各鉄道会社が交付する通勤定期券は、料金を支払うことで一定区間を自由に往復することが出来るというものですが、名義人本人が使用することを前提にしています。
家族や他人が定期券を利用することは不正乗車にあたります。
【不正乗車の罪】
≪明日のブログに続きます。≫
神奈川県横浜市保土ヶ谷区にて、不正乗車をして鉄道営業法違反等で書類送検される可能性がある場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。