偽装結婚で逮捕?
- 2022年11月7日
- その他の刑法犯事件
偽装結婚で逮捕?
偽装結婚で問題となる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市緑区在住のAさんは、横浜市緑区内の会社に勤める会社員です。
Aさんは横浜市内のスナックと呼ばれる店に足繫く通っていたところ、その店のオーナーから「Aさん独身だったよね?私のお客の社長さんが雇っている外国人Xさんが、日本人の配偶者になりたいって言っているんだけど、書類上だけでも結婚してやってくれない?報酬は100万円出すらしいから」と提案されました。
Aさんは結婚する予定もなかったので、二つ返事で受けることにしました。
婚姻届の提出前、AさんはXさんと一度だけ会う機会がありましたが、Xさんは日本語を話すことは出来ず、AさんはXさんの名前が難しく覚えられないまま、横浜市緑区役所において婚姻手続きを行いました。
当然、AさんはXさんと同居等していない、いわゆる偽装結婚の状態が数年続きました。
ある日、Aさんの自宅に横浜市緑区を管轄する神奈川県緑警察署の警察官が来て、「Xさんがある事件で逮捕され、そこでAさんの偽装結婚が発覚しました。署まで来ていただきます。」と説明され、一通りの説明をした後、Aさんは偽装結婚を理由に逮捕されました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【偽装結婚について】
今回の出来事は、Aさんとしては報酬が得られるという点でメリットがあります。
そしてXさんとしては、外国人ではあるものの「日本人の配偶者」という立場による「配偶者ビザ」を取得することができ、比較的長期間の在留資格が認められるほか一定以上の期間を経て永住権が認められる場合もあります。
しかし、AさんとXさんとは、実際に結婚する意思がないにも拘らず、婚姻手続きを行っています。
この行為は、俗に偽装結婚と呼ばれ、以下の点で問題になります。
①公正証書原本不実記載の罪
偽装結婚の場合、婚姻届等の書類を市区町村に提出することになります。
まず、この書類については、他人の名義や嘘の名前を書く等の行為がなければ、文書偽造の罪(婚姻届は私文書に当たるため有印私文書偽造・同行使の罪)には該当しません。
しかし、届出することで、受理した公務員は戸籍を作成することになり、結果として実態に反した戸籍ができることになります。
これは、公正証書原本不実記載の罪に当たります。
条文は以下のとおりです。
刑法157条1項 公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
②偽造公文書行使の罪
①で作成した戸籍を使用した場合には、偽造公文書行使の罪に当たります。
条文は以下のとおりです。
刑法155条1項 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
【偽装結婚で逮捕されたら弁護士へ】
偽装結婚が重大な事件に発展することを認識しておらず、頼まれる等して簡単に偽装結婚を引き受けてしまった場合でも、罪に変わりありません。
Aさんのように、偽装結婚してから数年経って突然逮捕されるという事案も考えられます。
いわゆる偽装結婚が事実であれば、当時の認識や罪に至る経緯等の供述が重要になってきます。
また、偽装結婚などではなく、結婚の実態がある場合であれば、その点をしっかりと主張していく必要があります。
神奈川県横浜市緑区にて、ご家族が偽装結婚をしてしまい公正証書原本不実記載の罪や偽造公文書行使の罪で逮捕された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の初回接見サービスをご利用ください。(有料)