ひき逃げ死亡事故と私選弁護人
- 2021年5月26日
- コラム
ひき逃げ死亡事故と私選弁護人
ひき逃げ死亡事故と私選弁護人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
~事例~
横浜市磯子区在住のAさん(30代男性)は、仕事で大型トラックを運転中に、Aさんの前方不注意から歩行者と接触する事故を起こしてしまい、Aさんはパニックになって、そのまま走り去った。
事故の被害者である歩行者は、救急車で病院に搬送され、その後に死亡した。
後日、死亡事故現場付近の防犯カメラ等の映像から、Aさんがひき逃げ事件の犯人ではないかとの容疑がかけられ、Aさんは神奈川県磯子警察署に逮捕された。
Aさんは、逮捕勾留後に国選弁護人を依頼したが、国選弁護人は被害者の遺族との示談交渉等に積極的に動いてくれる様子が無かった。
Aさんとその家族は、国選弁護人から私選弁護人への切り替えを検討するために、刑事事件に強い弁護士に相談して、まずは弁護士が警察署に留置されているAさんと接見(面会)を行い、今後の弁護方針を協議することにした。
(フィクションです)
~ひき逃げ死亡事故の刑事処罰とは~
自動車等を運転していて、注意を怠ったことにより人身事故を起こし、人を死傷させた場合には、自動車運転死傷行為処罰法違反の「過失運転致死傷罪」が成立して、「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」という法定刑の範囲で、刑事処罰を受けます。
他方で、自動車等を運転していて、人身事故を起こし、そのまま事故被害者の救護をせずにひき逃げした場合には、道路交通法違反の「救護義務違反の罪」が成立して、「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という法定刑の範囲で、刑事処罰を受けます。
事故被害者の救護をせずにひき逃げをして、かつ、被害者が死亡したような場合には、より法定刑の重い「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という法定刑が適用される中で、被害者が死亡している事情が考慮されて重く処罰される可能性が考えられます。
~国選弁護人から私選弁護人への切り替え~
刑事事件を起こして逮捕された場合に、勾留決定がなされたタイミングで、被疑者は、国選弁護人をつけることを請求することができます。
国選弁護人は、国の費用で、国選の弁護士名簿からランダムに選ばれる弁護士です。
熱心で刑事事件に詳しい弁護士が国選弁護人に選任されることもありますが、デメリットとしては、あまり刑事事件の対応経験がなかったり、被疑者やその家族と相性が合わない弁護士が選任される可能性も考えられます。
国選弁護人の選任は先ほど触れたようにランダムなものであり、被疑者と弁護士が直接会ってからお互いの相性を確かめてから選任されるものではないからです。
ここで、逮捕勾留されている被疑者や、その家族は、いつでも国選弁護人を解任して、自分の選んだ私選弁護人を選任することができます。
私選弁護人のメリットは、刑事事件の対応経験が豊富であったり、刑事弁護に熱心に動いてくれたり、相性のいい弁護士を自分で選ぶことができる点です。
ただし、私選弁護人のデメリットとしては、弁護人選任の費用を自分で負担しなければならない点が挙げられます。
~国選弁護人選任要件と私選弁護人選任のメリット~
国選弁護人とは、貧困などの理由で私選弁護人を選任することができない場合に、国の費用で弁護人を付する制度ですが、起訴前の国選弁護人の請求にあたっては、以下のような要件が必要となります。
・「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件」であること
・「被疑者に対して勾留状が発せられている」こと
・「被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができない」こと
法定刑の比較的軽い事件であったり、逮捕勾留(身柄拘束)のない在宅捜査事件であれば、上記の要件には当てはまらず、起訴前の段階で国選弁護人を選任することはできません。
そして、逮捕・勾留されていた事件でも、起訴前に釈放され在宅事件になった場合はその時点で国選弁護人は弁護人の立場から離れてしまうことになります。
他方で、私選弁護人は自分で費用を払って選任するものですから、起訴前であっても在宅事件であっても関係なく選任することができます。
起訴前に釈放されたとしても、私選弁護人はそのまま変わらず弁護人としてついていることになります。
ですから、「逮捕直後からすぐに弁護活動を開始してほしい」「弁護士と会って相性を確かめて弁護士を決めたい」「在宅事件の弁護活動をしてほしい」といった場合には、私選弁護人を選任するメリットは大きいと考えられます。
ひき逃げ死亡事故では、先ほど挙げた通り非常に重い刑罰の規定されている犯罪が成立します。
迅速に弁護士に相談し、可能な弁護活動や見通しを聞いておくことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、ひき逃げ死亡事故などの交通事件にも対応している刑事事件専門の弁護士がご相談・ご依頼を受け付けています。
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