自分の物を取返して逮捕?
- 2020年12月21日
- コラム
自分の物を取返して逮捕?
自分が貸していたものを相手が返してくれなかったため取返した、という場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市中区在住のAは横浜市中区内の会社に勤める会社員です。
Aには以前から交際をしていた横浜市中区在住のVがいましたが、男女間のトラブルから破局に発展しました。
その際、AとVとは共通の趣味があり、Aが持っていたグッズを鑑賞のためV宅に置いていたのですが、Aはそれを返してほしいとVに伝えたもののVはそれを拒否し、その後Vは着信拒否するなどしてAからの連絡手段を断ちました。
そこでAは、交際時に相互交換し返却しそびれていたV宅の合鍵を用い、Vの留守中にV宅の鍵を開け、そのグッズを取返した上で鍵を閉め、合鍵はポストに入れて帰宅しました。
しかし数日後、自宅に横浜市中区を管轄する横浜水上警察署の警察官が自宅に来て、Aを窃盗罪と住居侵入罪で通常逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAの家族は、自分の物を取返しただけで、合鍵を使って入っているにもかかわらずなぜ犯罪になるのか、刑事事件専門の弁護士に質問しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【自分の物を取返しても窃盗罪が成立する可能性がある】
ケースのAについて見ると、自分のグッズをVの家に置いていて、それを取返す形になっています。
通常、自分の物をどのように扱っていても問題はありませんし、自分の物を他人が持っている場合に取返そうと思う心理も納得がいきます。
しかし、無理やり取返すという行為は刑法上の問題が生じ、窃盗や強盗といった罪に問われる可能性があるのです。
ケースの場合は窃盗罪が問題となります。
窃盗罪は刑法235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定められています。
条文を見ると、窃盗罪に当たる行為は「他人の財物」を「窃取」することとされています。
ケースを見ると、窃取した物はAの所有物ですので「他人の財物」には当たらないように見えます。
しかし判例は、実際に所持していることによる「占有権」と所有者の権利である「所有権」を分けて考え、占有を保護法益とするという占有説に立っています。
つまり、例え所有権がある物であっても他人が占有している以上それは「他人の財物」にあたり、それを「窃取」した場合には窃盗罪が適用されるのです。
【合鍵での入室も住居侵入罪が成立する可能性がある】
また、ケースの場合は住居侵入罪の適用も考えられます。
住居侵入罪というと、ピッキングで鍵を開けたり鍵をかけ忘れたりしている家や部屋に侵入するというイメージがあります。
ケースのAは、鍵がかかっているV宅に返却しそびれていた合鍵で入っているという状況で、これは一見すると普通の行動に見えます。
しかし、住居侵入罪について、刑法130条は「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と定めています。
窃盗行為のために住居に入る行為は「正当な理由」には当たらないため、住居侵入罪も成立する可能性があります。
なお、窃盗罪と住居侵入罪は牽連犯が認められます。
よって、法律上2つの罪が成立しますが、刑の言い渡しについてはより重い刑罰である窃盗罪の罰条が適用されます。
神奈川県横浜市中区にて、御家族が自分の物を取返すため住居侵入罪や窃盗罪にあたる事件を起こしてしまい逮捕されたという場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。