示談のつもりが恐喝に?
- 2023年7月26日
- コラム
示談のつもりが恐喝に?
被害者として示談をしたつもりが恐喝事件に発展したという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説いたします。
【ケース】
神奈川県藤沢市在住のAさんは、藤沢市内の会社で勤務するXさんと婚姻し、生活しています。
ある日、Xさんから社内で上司Vさんからセクハラ行為を受けていると相談を受けたAさんは、自宅にVさんを呼び出し、「私の配偶者にセクハラしたらしいな。」「示談金500万払うか、会社の全員にお前がやった行為をメーリスで伝えるぞ」と言い、その日は示談金の一部と称して100万円を受け取り、年内に残金の400万円を支払うよう口頭で約束しました。
弁護士などの第三者は介入しておらず、示談書等の書類も交わしていません。
数日後、Aさんの携帯に藤沢市を管轄する藤沢北警察署の警察官から連絡が来てほしいと言われ、本件が以外に心当たりがなかったAさんは、刑事事件専門の弁護士に自身の行為について尋ねたところ、恐喝罪に当たる可能性を指摘されました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【恐喝事件について】
恐喝罪の条文は以下のとおりです。
- 刑法249条1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
条文は非常にシンプルで、「恐喝」に当たる行為をして、被害者の意思で財物を交付させた、そして両者に因果関係があるかどうかという点が問題となります。
恐喝は、相手に対してその反抗を抑圧するに至らない程度の脅迫又は暴行を加えることで、金などの財物の交付を要求する行為を意味します。
今回のAさんの場合、先行の事情として、Vさんが(Aさんの配偶者である)Xさんに対し、セクシュアルハラスメント(セクハラ)をしたとしています。
これが事実だった場合に、その内容によりますが、不法行為として民事上の損害賠償請求権が認められる場合があると考えられます。
また、強制わいせつ罪など刑事事件に当たる行為だった場合には、Vさんは被疑者として捜査の対象となります。
とはいえ、実際にセクハラ行為が認められ、Xさんがいわば被害者の立場だったとしても、適切な対応が求められます。
ケースでXさんの配偶者であるAさんは、示談すると口にしています。
セクハラなどの不法行為が認められる場合に、民事訴訟を提起するのでは負担が大きくなるため、まずは当事者間で合意を図る示談が行われる場合が一般的です。
示談の結果、示談金を支払う場合は多いですが、併せて示談書の締結が行われる場合がほとんどです。
この示談は、弁護士などの代理人を介さずに当事者同士で行うことは可能です。
そのうえで、示談金(と称する金)として500万円を要求しています。
仮に、Vさんがセクハラの賠償として500万円を支払うことに同意していれば、たとえ客観的に見て高額な示談金であっても、当事者間の合意であっても問題にはなりません。
しかし、示談に際し、AさんはVさんに対し応じなければVさんの行為を会社全員に知らせる旨を口にしています。
このように、Vさんの名誉を害する脅迫行為をして金を要求する行為は、恐喝罪に該当します。
仮にセクハラ等の被害に遭った場合でも、法律の専門家を代理人にして適切な示談を行うことが望ましいと言えます。
【恐喝事件での弁護活動】
Aさんの場合、まずは警察官から話を聞かれるということになりますが、場合によっては身柄拘束されるリスクがあります。
これは、被害者と接触する可能性があるかどうかという点で、判断が分かれると考えられます。
この場合、先ずは家族の監視監督のもと、AさんがVさんに直接連絡したり接触したりすることのないよう、誓約する必要があります。
次に、Vさんに対しては、謝罪と返金、接触の禁止などの約定を設けた示談書の締結に向けた示談交渉が考えられます。
恐喝罪には罰金刑や科料がないため、証拠が揃った場合には略式手続ではなく正式裁判になる可能性があります。
公開の法廷での刑事裁判を避けるためにも、起訴される前に早期の解決が求められます。
神奈川県藤沢市にて、被害者として示談をしたはずが恐喝事件の被疑者として捜査対象になってしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部の無料相談をご利用ください。