自衛目的でも事件に?銃刀法違反と軽犯罪法違反
- 2023年3月29日
- コラム
自衛目的でも事件に?銃刀法違反と軽犯罪法違反
自衛目的で刃物などを所持してしまったことで問題となる銃刀法違反と軽犯罪法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市瀬谷区在住のAさんは、横浜市瀬谷区の会社に勤める会社員です。
Aさんは昨今の報道を見ていつ誰に襲われるか分からないと考え、インターネット通販サイトでサバイバルナイフと呼ばれるナイフを購入し、自身のバッグに常に入れて持ち歩いていました。
ある日、Aさんは横浜市瀬谷区を歩いていたところ、横浜市瀬谷区を管轄する瀬谷警察署の警察官から声掛けされ、職務質問と所持品検査を受け、当該サバイバルナイフが見つかりました。
警察官は、Aさんに対し「銃刀法違反に当たる可能性があるので任意ですが同行してください」と求め、Aさんはそれに応じて「自衛目的で購入し所持していた」旨を供述しました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【刃物等を持ち歩く行為】
昨今、鉄道の車両や駅構内、路上などで刃物を振り回したり放火したりするなどして不特定多数の者が死傷されるという痛ましい事件が発生しています。
それらの報道を踏まえ、自身のみを守る目的で何かしらの防犯グッズの携帯を検討している、あるいは携帯しているという方が居られるかもしれません。
しかし、自衛目的で所持した場合に、それだけで違法に当たる場合がある物があります。
今回のケースではサバイバルナイフの所持を想定していますので、銃刀法(正式名称は銃砲刀剣類所持等取締法)違反や軽犯罪法違反にあたる恐れがあります。
該当条文はそれぞれ以下のとおりです。
①銃刀法22条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
②軽犯罪法1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
2号 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
刃物の所持については、大別すると刃体の長さが6cm以上の場合は①が、6cm未満の場合は②が、それぞれ適用されると考えられます。
【自衛目的は正当な理由に当たらない?】
前章で条文を確認したところ、
①の銃刀法違反では「業務その他正当な理由による場合を除いては」
②の軽犯罪法違反では「正当な理由がなくて」
という条件がついています。
もっとも分かりやすい例で言うと、警察官などは銃や警棒を所持していますが、これは業務であり正当な理由があることから、①②のいずれも問題となりません。
但し、正当な目的で拳銃が貸与されている場合であっても、例えば警察官が銀行強盗をする目的で拳銃を携帯していた場合には、「業務その他正当な理由」には当たらず、銃刀法等の法律に違反します。
また、一般人で考えると、料理人が職場の行き帰りで自前の包丁を持っていたり、料理人以外の方であっても包丁を購入して自宅に帰ろうとしている道中などについては、「業務その他正当な理由」があると評価され、①②のいずれも問題となりません。
しかし、Aさんの場合はサバイバルナイフという殺傷能力の高い刃物を自衛目的のために所持していたことが問題となっています。
判例は、「当該刃物を携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいい、これに該当するか否かは、当該刃物の用途や形状・性能、携帯した者の職業や日常生活との関係、携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と、携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきである(最高裁平成20年(あ)第1518号)」と判示しています。
自衛目的については正当な理由には該当しないと評価される可能性が高く、更にはサバイバルナイフという殺傷能力の高い刃物を所持する理由もないと判断され、①あるいは②のいずれかの罪に該当すると評価される可能性が高いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部には、銃刀法違反や軽犯罪法違反についての相談が日々寄せられています。
Aさんのように分かりやすい事例だけではなく、仕事のために所持していたものの失念していた、仕事のために所持していたと説明しても捜査機関が納得しない、などの日常生活から問題が生じることも少なくありません。
神奈川県横浜市瀬谷区にて、銃刀法違反や軽犯罪法違反などの罪で捜査を受けている方が居られましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご連絡ください。
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