事後強盗罪で逮捕
- 2021年7月14日
- コラム
事後強盗罪で逮捕
事後強盗罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
~事例~
神奈川県横浜市港北区のスーパーマーケットで商品4点を万引きしたAさんは、店を出た直後に店員に手をつかまれ、「未精算の物がありませんか。」と問いただされました。
Aさんは、頭が真っ白になり、「捕まってしまっては大変だ。」と思い、店員の手を振り払い、店員の身体を思いっきり押して転倒させてしまいました。
結局、Aさんはスーパーマーケットの駐車場で警備員に捕まり、現場に駆け付けた神奈川県港北警察署の警察官に逮捕されました。
Aさんは、警察官から「あなたの行為は、事後強盗の罪に当たる。」と言われ、そんなつもりはなかったと驚いています。
(フィクションです。)
通常、万引きは窃盗罪に当たりますが、事例のように万引きが発覚したことを受けて、相手方に暴行を加えた場合には、より重い罪の事後強盗が成立する可能性があります。
今回は、どのような場合に事後強盗罪が成立し得るのかについて説明します。
事後強盗罪について
事後強盗罪は、刑法第238条において、次のように規定されています。
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
事後強盗罪は、暴行・脅迫が窃盗行為後に行われる場合のものですが、これを全体的に観察すれば、強盗行為に準ずる性格が窺われ、また、刑事学的にもしばしばみられる行為態様であることから、強盗として論じられることとなっています。
事後強盗罪の主体は、「窃盗」、すなわち、「窃盗犯人」です。
ここでいう「窃盗」は、窃盗の実行に着手した者を指し、窃盗の実行の着手に及んでいない者については、事後強盗罪は成立しません。
事後強盗罪の暴行・脅迫の程度については、本罪が強盗として論ぜられる以上、その暴行・脅迫は、強盗罪におけるのと同じ程度のものであるべきで、「相手方の抵抗を抑圧するに足りる程度のもの」でなければなりません。
相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであるか否かは、具体的状況の下における暴行・脅迫を客観的に判断されます。
暴行・脅迫の対象となる相手方は、窃盗の被害者に限らず、追跡してくる目撃者や逮捕しようとする警察官であっても構いません。
しかし、行為者は、あくまで、財物取還を防ぐ目的、逮捕を免れる目的、罪証を隠滅する目的、いずれかの目的を達成することを意図して、暴行・脅迫に訴えるものであるため、暴行・脅迫の対象となる相手方については、その暴行・脅迫と窃盗犯人の目的との間に関連性があることが必要となります。
これに関連して、事後強盗罪の成立を認めるためには、窃盗犯人による暴行・脅迫は、窃盗の機会に行われる必要があります。
つまり、暴行・脅迫が、場所的・時間的・人的関係を総合的に判断し、財物奪取との密接な関連性を有すると認められなければなりません。
そのため、財物奪取の現場における暴行・脅迫は、両者の間に密接な関連性を当然に認めることができますが、例え現場でなくても、被疑者らに現場から引き続いて追跡されている途中での暴行・脅迫であっても、財物奪取と密接な関連性があると認められる状況で遂行されれば、事後強盗罪が成立する可能性はあります。
以上、事後強盗罪が成立する要件についてみてきましたが、万引き犯も窃盗犯人ですので、万引き後に店員や警備員に停止させられ、盗んだ物を盗れまい、逮捕されるまい、あるいは盗んだ証拠を消そうとして、相手方に暴力を振るったり、脅迫したりした場合には、窃盗ではなく事後強盗となることがあります。
事後強盗は、その法定刑も5年以上の有期懲役と重く、相手方に怪我を負わせてしまえば強盗致傷とより重い罪に問われる可能性もあります。
事後強盗で逮捕されてお困りであれば、早期に刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
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