(事例検討)不正アクセス禁止法に違反した場合にはどのような罪になる?故意犯処罰の原則とは?
- 2024年5月22日
- コラム
(事例検討)不正アクセス禁止法に違反した場合にはどのような罪になる?故意犯処罰の原則とは?
神奈川県横須賀市で分かれた相手のSNSにログインしていたという架空の事例を想定して、不正アクセス禁止法違反で問題となる罪と故意犯処罰の原則について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が検討します。
【ケース】
神奈川県横須賀市在住のAさんは、横須賀市内のVさんと交際していましたが、分かれることになりました。
しかし、その後にAさんがVさんのSNSアカウントで投稿をしていることが分かり、Vさんは横須賀市内を管轄する横須賀中央警察署に相談しました。
Aさんとしては、交際していた折にVさんがログインしていたSNSであり、Aさんはそのアカウントにログインしていた認識はなく無意識のうちにログインしていて、投稿してしまったと嫌疑を否認しました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【不正アクセス禁止法】
通常、SNSやメールアドレス、通販サイトなど、各人が利用するアカウントにログインするためにはパスワードを必要とします。
所有者でなければログインできないアカウントに、不正に入手したパスワードなどを用いてログインする行為は、不正アクセスと呼ばれる行為であり、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(通称、不正アクセス禁止法)により禁止されています。
条文は以下のとおりです。
不正アクセス禁止法3条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
同法11条 第三条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
不正アクセスをする場合、アカウントのパスワードを知る必要がありますが、その方法は様々です。
例えば、フィッシング詐欺と呼ばれる、メールやショートメッセージを利用し偽のホームページに誘導してパスワード等を入力させる方法でパスワードを得る方法があります。
それだけでなく、アカウント所有者の生年月日などから推測してパスワードを当てられる場合もあり、過去には芸能人がこのようなかたちでSNSの不正アクセス被害に遭ったという報道もありました。
【故意とは?】
故意について問題となる条文は以下のとおりです。
刑法38条1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りではない。
故意には、確定的故意と未必の故意があります。
確定的故意は明確な意思に基づいて行ったという場合の意思を指し、未必の故意は「行動の結果そのような結果を引き起こすかもしれない(罪となるべき事実の認識予見)」という場合の意思を指します。
日本の刑事事件では、別途条文がある場合(例えば、過失がある場合でも処罰をする規定がある過失傷害罪や人身事故など)を除き、故意なくしてしまった行為は処罰されません。
不正アクセス禁止法違反や名誉毀損罪には過失犯処罰規定などが存在しないため、故意があったと認められなかった場合には、刑事罰には問えないということになります。
【故意を否認する場合は弁護士に相談を】
今回のAさんの場合、確かにアカウントを確認しないままに投稿を繰り返していたという落ち度はありますが、不正アクセスについての故意、あるいは名誉毀損についての故意はなかったと考えられます。
そのため、警察官に「分かっていて投稿したんだろう」と言われた場合、故意を否認することになるでしょう。
そのため、取調べを受ける前に弁護士に相談し、自分の頭を整理したうえで取調べに臨むことをお勧めします。
神奈川県横須賀市にて、不正アクセス禁止法違反などの罪に問われる可能性があるものの、故意を否認する場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。