仮睡盗で私人逮捕
- 2020年11月2日
- コラム
仮睡盗で私人逮捕
公共交通機関や路上などで居眠りをしている人の財布などを盗むいわゆる仮睡盗事件で、警察官などではない一般人が逮捕できる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県相模原市緑区在住のAは、横浜市緑区内でアルバイトをし乍ら生活しています。
ある日、Aが相模原市緑区内を走行中のバスに乗車していたところ、通路を挟んで隣に座っていた男性会社員Vが居眠りをしていて、ジャケットの胸ポケットから長財布が見えました。
そこでAはVが寝ている隙に、Vの長財布を抜き取りましたが、最後尾に座っていたXにそれを見られ、見咎められました。
Aは次の停車駅で降りて逃走しようとしましたが、Xに背後から突き飛ばされ、のしかかられました。
その後、Aは通報を受けて駆け付けた相模原市緑区在住の津久井警察署の警察官に引き渡されました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【仮睡盗について】
仕事に疲れて、あるいはお酒の飲み過ぎで、公共交通機関などでついウトウトとしてしまった経験は多かれ少なかれあるかと思います。
そのような眠ってしまっている方のバッグやポケットから財布等を抜き取ったり、網棚に置いている鞄ごと盗んでいく行為を、仮睡盗あるいは仮睡者狙いと呼ぶことがあります。
仮睡盗の場合、被害者自身は荷物を持っていたり一時的に網棚などに置いたりするだけですので、未だ占有は被害者自身にあると考えられ、占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪が成立します。
窃盗罪の法定刑は以下のとおりです。
刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
【一般人による現行犯逮捕?】
ケースのAは、乗客であるXから突き飛ばされ、押し倒されて警察官が臨場するまで事実上身柄を拘束されています。
これは、ドラマなどでよくある警察官が手錠をかけて逮捕する…というイメージとは異なると思われます。
しかし、刑事訴訟法では私人逮捕あるいは常人逮捕と言い、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人」と定め(刑事訴訟法212条1項)、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と定められています(同213条)。
その後、一般人が被疑者を逮捕した場合には「現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡」すことを義務付けています。
以上の理由から、警察官等ではない一般人であっても、上記に当てはまる場合には被疑者を私人逮捕することが出来るのです。
もっとも、上記の要件に当てはまらないにもかかわらず逮捕をしてしまった場合、その行為が刑法220条が定める逮捕・監禁の罪に問われることも考えられるため、注意が必要です。
なお、ケースのXはAを私人逮捕する際に後ろから突き飛ばすといった暴行を加えていますが、判例は「その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力」を行使することが出来るとしています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ケースのように仮睡盗で私人逮捕されたという事件であれば、まずは初回接見(有料)に行き被疑者御本人から私人逮捕された際のお話を伺い、私人逮捕の手続きに不備があったのか否かや釈放に向けた弁護活動についての御説明を行います。
神奈川県相模原市緑区にて、御家族が仮睡盗などの刑事事件で私人逮捕されてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
御予約:フリーダイヤル0120-631-881