喧嘩から傷害致死事件で逮捕①
- 2021年3月4日
- コラム
喧嘩から傷害致死事件で逮捕①
喧嘩から傷害致死事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
【事例】
神奈川県中郡大磯町に住むAは、中郡大磯町にある会社に勤める会社員です。
ある日、Aは帰宅中に路上で肩がぶつかったことをきっかけとして、通行人Vと喧嘩になりました。
Vの口ぶりに腹を立てたAは、思わずVを強い力で突き飛ばしてしまいました。
すると、Vはその勢いで転倒し、路上に頭部を強く打ちつけてしまいました。
反応のなくなったVに驚いたAは救急車を呼びましたが、Vは頭部を強打したことが原因で、搬送先の病院で死亡してしまいました。
Aは中郡大磯町を管轄する神奈川県警察大磯警察署に傷害致死罪の容疑で逮捕され、取調べを受けることになりました。
Aは、「Vには喧嘩の延長で突き飛ばすことをしただけで、怪我をさせようとすら思っていなかった。それでも傷害致死罪になってしまうのか」と家族に依頼を受けて接見にやってきた刑事事件専門の弁護士に質問しました。
(※令和2年4月4日神奈川新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
【傷害致死罪】
事例のAは、喧嘩から傷害致死事件に発展し、逮捕されてしまっています。
当ブログでは、Aの逮捕容疑である傷害致死罪について詳しく取り上げていきます。
傷害致死罪は、刑法第205条に規定されている犯罪です。
刑法第205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
傷害致死罪の条文は非常にシンプルで、人の身体を傷害したことによってその人を死なせてしまった場合、傷害致死罪が成立するということです。
「傷害罪に当たる行為の結果人が死んでしまったら傷害致死罪」というイメージの多い方もいるのではないでしょうか。
しかし、Aのように、ただ突き飛ばすという行為しか意図しておらず、怪我をさせる意図もなかったような場合でも、傷害致死罪に問われることになるのでしょうか。
これを検討するために、刑法の傷害罪・暴行罪の条文についても見てみましょう。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
暴行罪の条文には、「人を傷害するに至らなかったときは」暴行罪が成立する旨定められています。
つまり、人に暴行した時に相手が傷害を負ってしまった時には傷害罪が、傷害を負うに至らなかった時には暴行罪が成立するということになります。
このことから、傷害罪の成立には暴行罪の故意=暴行を加えるという認識だけで足りるとされています。
例えば、人を殴るときに「怪我をさせよう」(=傷害罪の故意)とまでは思っていなくとも、「人を殴る」(=暴行罪の故意)ということを認識していれば、相手が怪我をした時には傷害罪が成立するということです。
このように、ある犯罪に当たる行為をした時(例:暴行罪に当たる「暴行」)、その結果として想定していたものより重い結果が発生してしまった(例:傷害罪に当たる「傷害」の発生)場合、その重い結果についても罪に問う(例:傷害罪に問う)というものを、結果的加重犯といいます。
すなわち、傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であるということになります。
ここで傷害致死罪に戻ると、傷害致死罪は「身体を傷害し、よって人を死亡させた」場合に成立します。
つまり、傷害致死罪は傷害罪の結果的加重犯であるといえます。
そして、先ほど触れたように、傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であることから、傷害致死罪は暴行罪の結果的加重犯でもあるということになります。
よって、傷害致死罪の成立には「相手が死ぬ」という結果の予見・認識は不要であり、暴行の認識があれば足りるということになるのです。
なお、相手の死という結果について予見・認識があった上で暴行をしていれば、殺人罪が成立する可能性が出てくることになります。
このように、刑事事件では、条文はシンプルに見えても、その成立のための構造が複雑であることも多いです。
その構造をきちんと理解するためには刑事事件の知識が欠かせませんから、専門家である弁護士に相談してみることが有効な手段の1つでしょう。
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