危険ドラッグで一部執行猶予
- 2021年1月17日
- コラム
危険ドラッグで一部執行猶予
危険ドラッグを所持したり使用したりしてしまった場合の罪と一部執行猶予の制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県逗子市在住のAは、逗子市内の会社に勤める会社員です。
Aは以前に大麻を使用し、3年前に懲役1年6月、執行猶予3年の判決言い渡しを受けました。
しかし、Aはその後も大麻を使用し続け、1年前からは危険ドラッグに手を出すようになりました。
ある日、Aが逗子市内を歩いていたところ、逗子市を管轄する逗子警察署の警察官からの職務質問を受けました。
Aはその時危険ドラッグと呼ばれるものを所持していたため職務質問を拒否し抵抗し続けていましたが、最後には強制捜査を受け、所持品から危険ドラッグが出てきました。
警察官からは、鑑定したのち連絡するといわれました。
Aは、執行猶予期間が終了した直後で危険ドラッグが発覚してしまったことから、裁判で全部執行猶予あるいは一部執行猶予になる可能性があるのか、逮捕前に刑事事件専門の弁護士に質問しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【危険ドラッグについて】
危険ドラッグには具体的に定義があるわけではありませんが、その多くは麻薬や覚醒剤の成分とほぼ同じような構造式なので、麻薬や覚醒剤と同様の影響を受ける可能性があります。
しかし、流通している危険ドラッグは実際にはどのような成分で構成されているかわからないため、人体への影響は計り知れません。
危険ドラッグは、医薬品医療機器法(通称:薬機法)により「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物質」である指定薬物定められ、医療等の用途を除いた使用や所持などを禁止しています。
違反した場合の罰則規定は「三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処し、またはそれを併科する。」と定められています。(薬機法84条26号)
【一部執行猶予について】
刑法には以前から刑罰の全部執行猶予の規定はありましたが、一部執行猶予、あるいは一部猶予付実刑判決と呼ばれる制度は2016年6月1日施行の改正刑法で新設されたものです。
たとえば裁判官が主文を言い渡しで「懲役2年6月の刑に処する。その刑の一部である懲役6月の執行を2年間、保護観察付きの猶予とする。」などと示した場合、裁判から2年間刑事収容施設(刑務所)に服役したのち、本来は更に服役する必要がある6ヶ月間については2年間猶予され、その間は保護観察官と保護司の指導を受けるということになります。
ただし、猶予期間中である出所後2年の間に刑事事件を起こしてしまった場合には、執行猶予は取り消されることになります。
なぜこのような制度を設けたかというと、施設内処遇と社会内処遇との連携による、再犯防止と改善更生のためと言われています。
施設内処遇というのは刑事収容施設で更生をはかることであり、社会処遇というのは一般社会に出た後での生活を通じての更生を意味します。
令和元年犯罪白書を見てみると、平成30年中の刑事事件(一審)の総数は53,649件で、全部執行猶予は31,725件、一部執行猶予は1,597件です。
罪名についてみてみると、窃盗罪は31件で、刑法犯全体(窃盗罪を含む)を見ても64件しかありません。
一方で薬物事件についてみると、覚醒剤取締法違反が1,456件、大麻取締法違反38件、麻薬取締法違反11件と、薬物事件での適用がほとんどです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
神奈川県逗子市にて、危険ドラッグを所持していて検挙され、鑑定を待っているという状況の方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
逮捕前の方については、事務所にて無料で御相談を受けることができます。