声をかけてもひき逃げ事件に?
- 2020年5月22日
- コラム
声をかけてもひき逃げ事件に?
声をかけてもひき逃げ事件となってしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
Aさんは、横浜市瀬谷区で自動車を運転中、わき見運転をしてしまったことで、自転車を運転していたVさんと接触する事故を起こしてしまいました。
Vさんは大きく転倒したため、Aさんは慌てて自動車を停止させVさんに声をかけましたが、大丈夫かという問いかけにVさんが「大丈夫です」と答えたため、そのまま走り去りました。
しかし、後日、Aさんのところに神奈川県瀬谷警察署の警察官がやってきて、「ひき逃げ事件のことできた」とAさんを逮捕してしまいました。
Aさんは、「自分は相手に声をかけたのだからひき逃げではないはずだ」と思い、家族の依頼で接見に訪れた弁護士にその旨を相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
【声をかけてもひき逃げ?】
皆さんの持たれているひき逃げのイメージは、「交通事故を起こしたのに何もせずにその場から逃げる」というものではないでしょうか。
今回のAさんも、事故当時は被害者であるVさんに声をかけて確認はしているようです。
それでもひき逃げとなってしまうのでしょうか。
そもそも、一般に言われているひき逃げとは、道路交通法に定められている交通事故の際に果たさなければならない義務を果たさなかったための道路交通法違反のことを指しています。
道路交通法には、交通事故の際には以下のような義務を果たさなけれなならないと決められています。
道路交通法第72条第1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
この条文のうち、前段部分に定められている部分が「救護義務」「危険防止措置義務」と呼ばれており、後段部分に定められている部分が「報告義務」と呼ばれています。
ひき逃げはこれらの義務に違反することから、道路交通法違反となるのです。
今回のAさんのケースを考えてみましょう。
Aさんは、たしかにVさんに声をかけているものの、事故について通報することも、Vさんの怪我等を確認して救急車をよぶなどの救護することもしていません。
このことから、単に声をかけたというだけでは、道路交通法に定められている救護義務違反や報告義務違反になると考えられ、ひき逃げとなると判断されたのでしょう。
たとえその時は大丈夫のように見えても、後日事故で怪我をしていたことが発覚し、診断書が提出されてひき逃げ事件に発展するというケースもあります。
交通事故を起こしてしまったら道路交通法に則って行動するよう注意をすることはもちろんですが、もしもひき逃げ事件の当事者となってしまったら、弁護士に相談しながら対応していくことが望ましいでしょう。
なお、ひき逃げ事件の場合、ここまでで触れてきた道路交通法違反のほかに、人身事故を起こしてしまったことによる過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪も成立することが考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、ひき逃げ事件を含む交通事故事件についてもご相談・ご依頼を承っています。
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