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公務員による特別公務員暴行陵虐致傷事件 | コラム | 刑事事件の弁護士なら横浜の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所

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公務員による特別公務員暴行陵虐致傷事件

公務員による特別公務員暴行陵虐致傷事件

公務員の方が特別公務員暴行陵虐致傷事件を起こした場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。

【事件】
神奈川県藤沢市に住むAさんは,神奈川県内の警察署に勤める警察官です。
Aさんは通報を受けて強盗犯人を逮捕するため現場に赴きました。
そして強盗犯人であるVさんを逮捕しようとしたところ,Vさんの抵抗にあったためにAさんもVさんに暴行を加えました。
Aさんはしだいに興奮状態に陥り,Vさんが抵抗する意思を失ってからも暴行を続け,治療4カ月を要する傷害を負わせました。
Vさんからの告訴によってAさんは特別公務員暴行陵虐致傷罪の疑いで,藤沢市内を管轄する藤沢警察署で取調べを受けることになりました。
(事件は全てフィクションです)

【特別公務員暴行陵虐致死傷罪】

特別公務員暴行陵虐致死傷という罪を聞いたことがないという方も多いことでしょう。
特別公務員暴行陵虐致死傷罪とは,特別公務員暴行陵虐罪(刑法第195条)を基本犯とする結果的加重犯です。

まず,Aさんによる暴行行為が特別公務員暴行陵虐罪に当たるかどうかを見ていきましょう。

刑法第195条
第1項 裁判,検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が,その職務を行うに当たり,被告人,被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは,7年以下の懲役又は禁錮に処する。
第2項 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも,前項と同様とする。

刑法第196条
前2条の罪を犯し,よって人を死傷させた者は,傷害の罪と比較して,重い刑により処断する。

「傷害の罪と比較して,重い刑により処断する」とは,例えば特別公務員暴行陵虐致傷罪の法定刑について,特別公務員暴行陵虐罪と傷害罪(刑法第204条)の法定刑とを比較して,その上限・下限の重い方を選択して法定刑とするという意味です。

よって,特別公務員暴行陵虐致傷罪の法定刑は15年以下の懲役または禁錮,特別公務員暴行陵虐致死罪の法定刑は3年以上20年以下の懲役ということになります。

刑法第195条第1項に挙げられている「裁判,検察若しくは警察の職務を行う者」とは,具体的には,裁判官,検察官,警察官のうち司法警察員と言われる者のことです。

また,「これらの職務を補助する者」とは,裁判所書記官,検察事務官,警察官のうちの司法巡査(司法警察員より下位の警察官)などの者をいいます。

「被疑者」とは犯罪の嫌疑をかけられ捜査を受けている者のことで,被疑者が検察官により起訴されると「被告人」になります。

「その他の者」は,被疑者・被告人との関係によって刑事事件や刑事裁判に参与する証人,参考人,被疑者などの者に限定されます。

Aさんは警察官ですので,「警察の職務を行う者」または「これらの職務を補助する者」に当たると考えられます。

暴行を受けたVさんは強盗犯人として逮捕の対象とされており,被疑者といえます。

次に,「暴行又は陵虐若しくは加虐の行為」について,暴行は暴行罪(刑法第208条)のいう暴行(人の身体に対する有形力の行使)だけでなく,人の着衣を破るといった間接的な暴行も含まれると解されています。
陵辱は人を辱めることで,加虐は人をいじめることですが,陵辱と加虐を合わせ陵虐として,暴行以外の方法によって人に対して精神的・肉体的苦痛を与える一切の行為がこれに当たると考えられています。

AさんがVさんに加えた暴行は,特別公務員暴行陵虐罪にいう暴行に当たります。

特別公務員暴行陵虐罪が成立するためには,暴行等の行為が「その職務を行うに当たり」行われていなければなりません。

Aさんは被疑者であるVさんを逮捕するに当たってVさんに暴行を加えていますので,この要件も充たされます。

よってAさんがVさんを逮捕するにあたって暴行を加えた行為について,特別公務員暴行陵虐罪が成立すると見ることができます。

しかし,AさんはVさんからの抵抗を受けて暴行を加えており,また,裁判所の発する逮捕令状などに基づいて被疑者を逮捕するに当たって大なり小なりの有形力の行使がありうることから,正当防衛(刑法第36条第1項)または法令行為(刑法第35条)として正当化されないかが問題となり得ます。

まず法令行為に当たるかどうかについて,刑事訴訟法などによって許されているのは適法な手続きによる逮捕行為だけであって,逮捕するに際して被疑者に暴行を加えることまで許容するものではありません。

また,正当防衛にあたるかどうかについても,確かに当初はVさんの暴行に対する反撃として防衛のために暴行があったと見ることもできますが,Vさんが抵抗する意思を失った後もAさんは暴行を継続しており,少なくともこの部分については違法性が阻却されず特別公務員暴行陵虐罪が成立する可能性が高いと考えられます。

この暴行によってVさんに傷害結果が生じていますので,Aさんは特別公務員暴行陵虐致傷罪に問われる可能性があります。

特別公務員暴行陵虐罪や特別公務員暴行陵虐致死傷罪では,警察などの職務活動を行うに当たっての行為が処罰対象となりますので,そこに正当化事由はないのかなどの事実を分析する必要性が高いです。

特に特別公務員暴行陵虐致傷罪については重い法定刑となっていますので,情状などにより減軽を得られなければ長い服役生活となってしまうことも予想されます。

不起訴や執行猶予の獲得,あるいは酌量減軽を得るためには,早期から刑事事件に強い弁護士に事件を依頼しておく必要があります。

特別公務員暴行陵虐罪・特別公務員暴行陵虐致死傷罪の被疑者となってしまった方,藤沢警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。

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國武 優

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