メールを連続して送信…迷惑防止条例違反?ストーカー規制法違反?
- 2021年11月20日
- コラム
メールを連続して送信…迷惑防止条例違反?ストーカー規制法違反?
メールを連続して送信した場合に迷惑防止条例違反やストーカー規制法違反に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説します。
~事例①~
Aさんは、川崎市宮前区に住んでいる同僚の女性Vさんのことを好ましいと感じていました。
Vさんからメッセージアプリの連絡先を聞いたAさんは、Vさんに対して、食事に誘ったり交際を求めたりするメールを何週間にもわたって何度も繰り返し連続して送信しました。
Vさんは、迷惑なのでやめてほしいという旨をAさんに伝えましたが、Aさんのメール送信は止みませんでした。
メールの連続送信に恐怖を感じ始めたVさんは神奈川県宮前警察署に相談。
その結果、Aさんはストーカー規制法違反の容疑で神奈川県宮前警察署に話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
~事例②~
Aさんは、川崎市宮前区に住んでいる同僚の女性Vさんのことが気にくわないと感じていました。
Vさんの連絡先を知ったAさんは、Vさんに対して嫌がらせ目的でメールを連続送信するようになりました。
Vさんは、迷惑なのでやめてほしいという旨をAさんに伝えましたが、Aさんのメール送信は止みませんでした。
メールの連続送信に恐怖を感じ始めたVさんは神奈川県宮前警察署に相談。
その結果、Aさんは神奈川県迷惑防止条例違反の容疑で神奈川県宮前警察署に話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・メールの連続送信で成立する犯罪
事例①と事例②では、AさんがVさんに対してメールを連続して送信するという点が共通しています。
しかし、事例①と事例②でAさんにかけられている犯罪は異なっています。
メールを連続して送信することは共通しているのに、なぜ異なる犯罪の容疑となっているのでしょうか。
まず、事例①でAさんに容疑がかけられているストーカー規制法の中身を確認してみましょう。
ストーカー規制法第18条
ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
ストーカー規制法では、文字通りストーカー行為をすることを規制していますが、この「ストーカー行為」は、簡単に言えば「つきまとい等」を繰り返すことを指しています(ストーカー規制法第2条第4項)。
その「つきまとい等」がどのように定義されているかというと、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」(ストーカー規制法第2条第1項)、面会や交際など義務のないことを要求したり(第2号)、電子メールなどを送信したり(第5号)することを指しています。
大まかにいえば、恋愛感情や好意、それに基づいた怨恨などの理由で繰り返し電話やメール、つきまといや面会・交際の要求を行った場合にはストーカー行為となり、ストーカー規制法違反となる可能性があるということになります。
事例①でAさんは、Vさんを好ましいと感じ、食事に誘ったり交際を求めたりする内容のメールを連続して送っています。
Aさんによるメール送信は何週間も繰り返し行われていたようですから、こうしたことからAさんのメールの連続送信はストーカー行為であると判断され、ストーカー規制法違反の容疑をかけられたのでしょう。
対して、事例②でAさんは神奈川県の迷惑防止条例違反の容疑がかけられています。
神奈川県の迷惑防止条例では、以下のような条文があります。
神奈川県迷惑防止条例第11条
何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(略)第2条第1項に規定するつきまとい等及び同条第3項に規定するストーカー行為を除き、第1号から第4号までに掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復して行つてはならない。
第5号 …又は拒まれたにもかかわらず、…、若しくは電子メールその他の電気通信(略)第2条第1号に規定する電気通信であつて、特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するためのものをいう。)の送信をすること。
神奈川県迷惑防止条例でも、メールを繰り返し送信する行為は禁止されていますが、その条文にはストーカー規制法で定められているものを除くという注釈がついています。
禁止している行為自体はストーカー規制法と似たような行為ですが、ここで、迷惑防止条例ではその行為がどういった感情からくるものかという限定がないことが重要です。
ストーカー規制法では、恋愛感情・好意やそれが満たされないことによる怨恨などの感情からつきまとい等を繰り返すことがストーカー行為として規制されていましたが、迷惑防止条例ではそれ以外のつきまとい等を繰り返すような行為が規制されているということになります。
例えば、今回の事例②のAさんがVさんへのメール送信を繰り返した理由は、Vさんが気にくわないことによるVさんへの嫌がらせです。
これは恋愛感情や好意によるものではないですし、それらが満たされないことによるものでもありません。
ですから、事例②でAさんの容疑として神奈川県迷惑防止条例違反がかけられたのでしょう。
メールの連続送信という行為1つをとっても、細かな事情が異なるだけで成立しうる犯罪が変わってきます。
刑事事件では、こうした細かな事情から成立する犯罪が異なったり、それによって今後の見通しや手続きが異なってきますから、刑事事件の当事者となってしまったら、早い段階で専門家である弁護士の話を聞いてみるべきといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部では、初回無料法律相談や初回接見サービスなどを通じてご相談者様のサポートを行います。
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