名誉毀損①(名誉毀損と侮辱罪)
- 2020年8月9日
- その他の刑法犯事件
名誉棄損①(名誉棄損罪と侮辱罪)
名誉棄損罪と侮辱罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市中区在住のAは、横浜市中区内の会社に勤める会社員です。
Aは、上司Vから嫌がらせを受けていました。
遂に我慢の限界にきたAは、SNSにて「Vは三流大学卒業で上司には向いていない」「Vは社内の部下Xと不倫関係にある」などと書き込みました。
その投稿を知ったVは、横浜市中区にある神奈川県警察本部に行き、刑事告訴を行いました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【名誉棄損罪について】
まずは名誉棄損罪について検討します。
名誉棄損罪の法定刑は以下のとおりです。
刑法230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
名誉棄損罪では、①公然性、②事実を摘示したこと、③他人の名誉を棄損したこと、が要件とされています。
ケースについて見ると、まず①の点で、SNSがどのようなものかによって異なるでしょう。
例えば、TwitterやFacebook、Instagramといったアプリで、不特定多数の者が閲覧できる設定で投稿したのであれば、公然性があると言えるでしょう。
一方で、上記のアプリでいわゆる鍵アカにするなど特定の者以外見られない設定にしたり、LINEのトークのような特定の相手しか見られない状態での投稿は、公然性の要件を満たさないといえるでしょう。
ただし、特定且つ少数の者に対しての投稿であっても、その投稿を見聞きした者が他人に話をすることで噂が広がるような状態になる可能性(伝播可能性)がある場合には、公然性が認められるため注意が必要です。
②の事実について、ケースの投稿のうち「Vは社内の部下Xと不倫関係にある。」旨の投稿については、事実と言えるでしょう。
なお、条文を見てのとおり事実は真実である必要はないので、Vが実際に不倫をしているか否かは問題となりません。
③については、不倫についての投稿をすることでVの名誉が毀損する可能性はあるため、この要件についても満たされる可能性が高いでしょう。
【侮辱罪について】
次に侮辱罪について検討します。
侮辱罪の条文は以下のとおりです。
刑法231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
侮辱罪については、名誉棄損罪とは異なり事実を摘示する必要がありません。
公然と、相手を侮辱することで成立する罪です。
ケースについて見ると、「Vは三流大学卒業で上司には向いていない」と投稿しています。
名誉棄損罪の言う事実はある程度具体的な内容を含むものではならないとされているため、「三流大学卒業」「上司に向いていない」という内容が事実に当たるのか、という判断がなされますが、これらが事実を摘示しているとまでは言えないでしょう。
よって、この投稿については侮辱罪が適用される可能性があります。
【名誉に対する罪は親告罪】
名誉棄損罪、侮辱罪といった名誉に対する罪は、親告罪です。(刑法232条1項)
そのため検察官は、被害者側が刑事告訴をしない限り、被疑者(加害者)を起訴することができません。
よって、被疑者やその代理人である弁護士は、被害者に対して刑事告訴を回避する、あるいは刑事告訴を取り消してもらうための弁護活動を行う必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、侮辱罪や名誉棄損罪といった名誉に関する罪での御相談・御依頼を数多く承ってまいりました。
神奈川県横浜市中区にて、自身が名誉棄損罪あるいは侮辱罪といった名誉に対する罪に当たる可能性がある投稿をした、あるいは既に刑事告訴されてしまったという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御相談ください。
刑事事件・少年事件専門の弁護士が、事務所にて無料で御相談をお受けします。