身分証明書を偽造
- 2020年11月9日
- その他の刑法犯事件
身分証明書を偽造
友人に頼まれて偽物の証明書を作成した場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市保土ヶ谷区在住のAは、神奈川県内の大学に通う大学生です。
Aはコンピューターを扱うことが好きで、その知識も長けていました。
ある日、同じ学校に通う横浜市保土ヶ谷区在住のXから、「とあるアイドルのコンサートに行きたかったがチケットが当たらなかった。インターネットでダフ屋から購入することに成功したが、チケットには名前が書かれていて身分証明書が必須である。何とかならないか。」という相談を受けました。
Aは、詐欺などの違法な行為に使うのであれば協力は出来ないが、入場の際にだけ使うという条件であれば良いと考え、Xの名前とは異なる名前でXの顔写真を貼り付けた身分証明書を偽造してXに渡しました。
しかし、Xは偽造した身分証明書が入った財布を紛失してしまいました。
その財布は横浜市保土ヶ谷区を管轄する保土ヶ谷警察署に届けられましたが、警察官は偽造した身分証明書であることに気が付き、遺失届を出したXの取調べを行いました。
その際、偽造したのはAであることが発覚したため、警察官はAに対しても取調べを開始しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【身分証明書の偽造】
ケースのAは、身分証明書を偽造しています。
これについて、その偽造した身分証明書を受け取ったXは、詐欺などといった直接的な犯罪に使用したわけではありません。
しかし、どのような用途を目的としていたとしても、身分証明書を偽造した時点で罪に当たる可能性があります。
そしてその罪については、どのような身分証明書を作成したのかにより異なります。
①有印公文書偽造罪
身分証明書のうち、運転免許証やパスポート、健康保険証などの公的機関が作成するものなかで公務員が署名や押印をする必要があるものを偽造した場合、有印公文書偽造罪にあたります。
有印公文書偽造罪の客体(対象)となる書類や身分証明書は、その性質上保護すべき度合いが極めて高いことからも、法定刑は文書偽造の罪の中で最も厳しいものとなっています。
この罪で起訴された場合、罰金刑が用意されていないことから略式手続をとることはできず、正式な裁判になります。
刑法155条1項 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
②(無印)公文書偽造罪
公文書のうち押印がないものについては、この罪にあたります。
物品税表示証紙がこれにあたるとされています(最決昭35・3・10)。
刑法155条3項 …公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造…した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
③有印私文書偽造罪
公的機関以外が作成する身分証明書などの書類のうち、署名や捺印を必要とするものを偽造した場合、有印私文書偽造罪が適用される可能性があります。
例えば、Aが大学や会社の在籍を証明する身分証明書を作成した場合には、この罪に当たる可能性があります。
刑法159条1項 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
④(無印)私文書偽造罪
公的機関以外が作成する身分証明書などの書類のうち、署名や捺印を必要としていない物についてはこの罪が成立します。
刑法159条3項 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
なお、Xの行為については、上述の罪についての「行使罪」として処罰される可能性があります(罰条については同じです。)。
神奈川県横浜市保土ヶ谷区にて、身分証明書を偽造してしまい捜査を受けることになった方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。
在宅捜査の場合、事務所にて無料で御相談を受けることが出来ます。