リベートで刑事告訴
- 2020年11月22日
- コラム
リベートで刑事告訴
会社勤務の方が背任事件で刑事告訴された場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県横浜市港南区在住のAは、横浜市港南区内の会社に勤める会社員です。
Aは営業としての仕事をしているのですが、本来は1000万円で契約していたところ、契約書上1200万円での契約を行い、200万円をリベートとしてA自身の個人口座に送金するよう依頼をしてその200万円を受け取っていました。
数ヶ月後、Aの上司はAが普段とは異なる契約をしていたことに気が付き、契約先の会社からAの個人口座にリベートを送金していたという裏付けをとり、Aの聴聞を行った上で横浜市港南区を管轄する港南警察署に背任罪での刑事告訴を行いました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【リベートと背任罪】
通常、会社や個人が何かしらの事務を依頼した場合、依頼者はより安く、よりレベルの高いの事務を望むことでしょう。
それに反する事務をした場合、背任ということになり背任罪に処される可能性があります。
昨今では会社の取締役や監査役といった立場の者が背任をした会社法上の特別背任という罪が有名になっていますが、このブログでは刑法上の背任罪について検討していきます。
まずは背任罪の条文を御覧ください。
刑法247条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
リベートは、この背任罪に当たる可能性がある行為です。
第一に、背任罪の主体となるのは、「他人のためにその事務を処理する者」です。
これは、他人からの信任委託関係による基づき事務をしている人を指します。
これには、契約上の関係がある場合のほか、法令上の関係、事務管理などの関係が考えられます。
第二に、「自己若しくは第三者の利益を図る目的」か「本人に損害を加える目的」が必要ですが、リベートを自身の口座に送金させていることから、自己の利益を目的としていることが伺えます。
第三に、「任務に背く行為」について、リベートを自身の口座に送金させているということは、その分の金額を下げることができたといえます。
会社は、できるだけ少ないコストで最大の利益を目的としていると考えられるため、Aの行為はその目的に背く行為であると言えるでしょう。
第四に、会社としてはAの行為により契約に際して200万円分を多く支払っているということから財産上の損害が発生していると言えます。
以上の理由から、Aのリベートは背任罪に当たると考えられます。
なお、リベートの先がA個人口座ではなく会社の口座だった場合、背任罪には当たりません。
実際、日本の商慣習上そのような行為は行われているようです。
【刑事告訴とは】
被害者やその代理人などが警察などの捜査機関に対して刑事事件があった旨の申告をする場合に、刑事告訴という手続きがあります。
以下で、刑事告訴と、類似の手続きである被害届との違いについて検討致します。
・親告罪の場合は刑事告訴なしに起訴できない
刑事告訴の特徴の一つは、親告罪の場合は必ず必要という点です。
親告罪に当たる罪で捜査機関が刑事告訴なしに起訴することはできませんし、そもそも刑事告訴なしに捜査機関が捜査を開始することは考えにくいです。
刑法上の親告罪には、名誉毀損罪や侮辱罪、過失傷害罪、器物損壊罪などが挙げられます。
もっとも、ケースは背任罪の適用が検討されるところ、背任罪は非親告罪ですので、必ずしも刑事告訴が必要というわけではありません。
・刑事告訴は刑事処罰を求める場合に用いる
また、刑事告訴は被害者らによる意思を含むか否かという点で、被害届とは異なります。
被害届は、単に捜査機関に対して「このような刑事事件が発生した」という申告を行うものです。
対して刑事告訴は、捜査機関に対して被害の発生を申告するとともに、被害者として被疑者に対して厳しい刑事処分を求める、という手続きになります。
神奈川県横浜市港南区にて、会社の業務で自身の口座に送金させるリベートを行い、会社から背任罪で刑事告訴をされる可能性がある方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。