性的な画像をインターネット上に投稿した嫌疑で男性が書類送検されたという事例について検討
- 2024年4月10日
- コラム
性的な画像をインターネット上に投稿した嫌疑で男性が書類送検されたという事例について検討
神奈川県警察本部がインターネット上に性的な画像を投稿した嫌疑で男性を書類送検したという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が検討します。
【ケース】
知人女性の性的姿態を写した画像をインターネット上に投稿したとして、神奈川県警が1月に(男性)議会議員を、わいせつ物陳列の疑いで書類送検していたことが28日までに、捜査関係者への取材で分かった。
書類送検容疑は、2022年12月ごろ、知人女性の性的姿態が写った画像を不特定多数が閲覧できるネット上の掲示板に投稿した、としている。
県警がサイバーパトロールで画像を見つけて捜査したところ、(男性)のスマートフォンから発信されたことが判明した。
(男性)は容疑を認めているという。
神奈川新聞社の取材に対し、(男性)は「画像を私が流出と言いますか、出したのは事実」とした上で、「当時のことははっきりとは覚えていないが、お酒を飲んでいたこともあり軽率に出してしまった。本当に許されることではない。反省してますし、警察の捜査には全面的に協力させていただいている」と話した。
略
(2024年2月29日06:00 神奈川新聞引用 氏名等は伏字にしています)
【わいせつな画像をアップロードした場合の法的問題】
刑法175条
1項 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2項 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
条文は、わいせつな文章等を①頒布(不特定多数の人に配布すること)、又は②公然と陳列した場合に成立し、媒体が紙ベースであれば
①をわいせつ物頒布罪、②をわいせつ物陳列罪
と呼び、データであれば
①わいせつ電磁的記録記録媒体頒布罪、②をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪と呼びます。
今回の事例については、「性的姿態を写した画像をインターネット上に投稿した」とされているため、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成立が検討されます。
巷には、インターネット上、あるいはDVDなどの性的な動画や画像が数多存在します。
しかし、必ずしもわいせつな画像や動画をアップロードしたり広めたりする行為が違法という訳ではありません。
特に問題となるのが、わいせつな電磁的記録記録媒体に該当するかどうかという点です。
判例は、わいせつの定義について「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とされています。(最判昭26・5・10)
そして、そのわいせつ性は「一般社会において行われている良識すなわち社会通念を基準とし、当該作品自体からして純客観的に行」い判断されるべきであるとされています。(最判昭32・3・13)
現状、わいせつ物に該当するかどうかは、性器露出の有無について判断されます。
単に乳房を露出しただけでは、わいせつ物とは評価されません。
しかし、陰部にモザイク処理などを施していない動画・画像については、わいせつ物と評価され、各法律に違反する可能性が高いと言えます。
いわゆるストリップ(女性が衣服を脱ぐ等する場)と公然わいせつ罪の場合でも同様で、女性が乳房を晒すような行為だけでは公然わいせつには該当しませんが、性器にスポットライトを当てる等して披露していた店舗では摘発されるという場合もあるようです。
【書類送検について】
書類送検という言葉は、日々のニュース報道で目にすることがあるかと思います。
この書類送検は法律用語ではなく、書類のみ行う検察官送致を意味します。
ほとんどの刑事事件の場合、最初の捜査は警察官が行いますが、最終的に事件は検察官に送致され、検察官が追加の取調べ等を行ったうえで、起訴するかどうか判断するのが原則です。
この、警察官(など)が検察官に事件を送致することを、検察庁送致と呼びます。
検察庁送致には2種類あり、
・被疑者が逮捕している場合…逮捕から48時間以内に、書類及び証拠物と被疑者の身柄を検察官に送致(又は釈放)
・被疑者が逮捕されていない場合…取調べなどが一通り行われて証拠書類がまとまり次第、書類及び証拠物を検察官に送致
となっています。
よって、事例の男性は、逮捕されることなく、あるいは逮捕された場合でも48時間以内に釈放されたのち、警察官の取調べなどが行われ、その書類がまとまった神奈川県警察本部の警察官が横浜地方検察庁に書類・証拠物を送致した、という報道であると考えられます。
【書類送検される前に弁護士に相談を】
書類送検と聞くと軽微な手続のような印象を抱きがちですが、決してそうではありません。
書類送検だった場合でも、起訴されて裁判になる事件は多く、実刑判決が言い渡されるケースもあります。
そして書類送検されるということは、警察官などが取調べ等を終えていて、裁判のための証拠がある程度揃っている場合がほとんどです。
当然、それらの証拠は裁判で用いられる可能性があるものですので、事件の内容次第では不利に生じる可能性もあります。
そのため、書類送検などの手続が進む前に、弁護士に弁護を依頼し、取調べでのアドバイスを受けることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所の弁護士は、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪などの性犯罪事件の経験が豊富です。
神奈川県内にて、御自身がわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪で捜査を受けている方、書類送検されるおそれのある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で法律相談を受けることができます。