職務質問で暴れて公務執行妨害罪に
- 2020年5月26日
- コラム
職務質問で暴れて公務執行妨害罪に
職務質問のため警察官から声をかけられたものの、そこで暴れてしまい公務執行妨害罪として逮捕された場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県逗子市在住のAは、逗子市内の会社に勤める会社員です。
ある日Aは逗子市内での飲み会に参加し、お酒を飲んだため運転せずにアルコールが抜けてから運転しようと考え駐車場にて仮眠をとることにしました。
そこへ、逗子市内を管轄する逗子警察署の警察官がAの車に近づき、窓ガラスをノックして職務質問に応じるよう説得を開始しました。
しかしアルコールが残っていたことに加え寝起きでイラついていたAは、警察官に対して「なんでお前らなんかと話さなければならないんだよ」「失せろ」などと大声を上げたうえ、職務質問のための説得を続けようとした警察官を突き飛ばして擦り傷を負わせました。
職務質問にあたった警察官は、Aを公務執行妨害罪で現行犯逮捕しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【職務質問について】
職務質問を受けた方、あるいは受けたことこそないがそのような行為が認められている、ということをご存知の方は多いことでしょう。
職務質問は、警察官職務執行法(通称:警職法)により以下のとおり定められています。
警職法2条1項
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。
なお、職務質問はあくまで任意で行われる必要があり、警察官が強制的に身柄を拘束するなどして行うことは出来ません。
警職法2条3項
前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
もっとも、職務質問を行う上で一定程度の有形力の行使を認めていることも事実です。
判例は、その基準を必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況の下で相当と認められる限度でそれを可能と判事しています。
そして、例えば自動車に乗車中の者に対して運転席の窓からエンジンキーを回してエンジンを切った行為や、逃走しようとした者の左手首を掴んだ制止行為について、任意での捜査の限界を超えていないとして違法ではないと判断しています。
【公務執行妨害罪について】
公務執行妨害罪については、刑法典の第五章「公務の執行を妨害する罪」に、以下のとおり規定されています。
刑法95条1項 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
ケースについて検討すると、職務質問という警察官による正当な職務の執行に対し、暴行を加えています。
この行為自体が公務執行妨害罪を成立させることになります。
また、結果として警察官が怪我を負った場合については、公務執行妨害罪に加えて傷害罪が問題となります。
傷害罪と公務執行妨害罪とは、1個の行為で2個以上の罪に触れることになることから、観念的競合とされます。(刑法54条1項)
公務執行妨害罪の法定刑は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」で、傷害罪の法定刑は「十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」と定められているため、より重い傷害罪が適用されることになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では、職務質問中に暴れるなどしたという公務執行妨害事件についても取り扱いがございます。
神奈川県逗子市にて、ご家族の方が職務質問中の公務執行妨害事件で逮捕された、あるいは捜査を受けているという場合、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。