職務質問について解説
- 2022年4月27日
- コラム
職務質問について解説
今回は、しばしば捜査の端緒となる職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
神奈川県横浜市中区在住のAさんは、横浜市中区内の公道をLSDを携帯して街を歩いていたところ、横浜市中区を管轄する加賀町警察署の警察官から職務質問を受けました。
Aさんには薬物事犯の前科があり、LSDの所持が発覚するとまずいと考えたAさんは、職務質問を頑なに拒み続けたため、警察官らはポケットの中身やカバンの中身を見せるよう説得を続けました。
観念したAさんはカバンの中にLSDが入っていることを打ち明け、後に麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~LSDを所持した場合に成立する犯罪~
麻薬及び向精神薬取締法第66条1項は、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持」する行為を禁止しています。
ジアセチルモルヒネ等とは、一般に「ヘロイン」のことを意味します。
LSDは、「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」に該当します。
カバンの中にLSDを入れて携帯する行為は、LSDをみだりに所持する行為に該当する可能性が高いでしょう。
LSDの所持行為につき有罪判決を受けた場合は、7年以下の懲役に処せられます。
また、LSDを所持していたことが発覚すれば、これを使用しているのではないかとの嫌疑をかけられます。
尿検査などの結果、LSDを使用していることが発覚した場合は、LSDの「施用罪」に問われます。
こちらも、有罪判決を受けた場合には7年以下の懲役に処せられます(麻薬及び向精神薬取締法第66条の2第1項、同法第27条1項柱書)。
~職務質問とは?~
警察官職務執行法第2条1項は、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる」としています。
街頭で警察官から声をかけられ、何をしているのか、どこに行くのかなどと尋ねられるケースが典型例です。
職務質問の対象者において特に問題がなければ、5分~10分程度で終了するのが通常です。
~職務質問は任意?~
結論をいえば、職務質問に応じるか否かは任意です。
返答を強制したり、対象者を制圧するなどしてポケットを調べるなどの処分はできません。
どうしても所持品を調べたい場合には、裁判官が発付する捜索差押許可状が必要となります。
※警察官職務執行法
第2条3項 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
しかしながら、所持・携帯が禁止されている物件を持っているなど、自身の犯罪行為の発覚をおそれる対象者はしばしば職務質問を拒絶します。
このような場合には、警察官が増員されたり、警察官の口調、態度が厳しくなります。
職務質問を拒否したからといって、そのまま警察官が立ち去ることはほぼないでしょう。
具体的状況にもよりますが、適法とされうる任意処分の範囲は広く、その場を立ち去ろうとする対象者に立ちふさがったり、対象者の肩に手をかける、職務質問に応じるよう交渉を続ける、などの行為はほとんどの場合、法律上問題とはされないようです。
もっとも、職務質問の手続に任意処分の限度をこえた違法な点があるとして、捜査の適法性を争い、不起訴処分や無罪判決を獲得できる場合もありえます。
職務質問の適法性に疑問がある方は、刑事事件に詳しい弁護士のアドバイスを受け、今後の対策を行うことをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
神奈川県横浜市中区にて、LSDを所持していた際の職務質問の適法性に疑問のある方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。