傷害行為を煽る行為と犯罪
- 2020年6月19日
- コラム
傷害行為を煽る行為と犯罪
傷害事件などでの現場幇助罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【事件】
Aさんは神奈川県横浜市瀬谷区のアルバイト先で同僚のBさんが同じく同僚のVさんに殴る蹴るの暴行を加えている現場を目撃しました。
AさんはしばしばVさんから仕事上の注意を受けていました。
そのことについて不満を感じていたこともあって,Vさんを暴行するBさんに対し「いいぞ!もっとやれ!」「殺してしまえ!」などと言葉をかけはやし立てました。
Aさんの言葉によってさらに興奮したBさんはVさんに重傷を負わせるに至り,放置されたVさんはそのまま死亡してしまいました。
Aさんは傷害罪の幇助の疑いで横浜市瀬谷区を管轄する瀬谷警察署の警察官から、取調べを受けることになりました。
(上記事件はフィクションです。)
【現場助勢罪】
傷害罪(刑法第204条)や傷害致死罪(刑法第205条)が行われるにあたって,はやし立てたり無責任な声援を送るなど現場において勢いを助ける行為を行った場合,現場助勢罪(刑法第206条)として処罰される可能性があります。
刑法第206条
前2条の犯罪が行われるに当たり,現場において勢いを助けた者は,自ら人を傷害しなくても,1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
「犯罪が行われるに当たり」とは,傷害罪や傷害致死罪の原因となる暴行が行われているときにという意味です。
「現場において」とは,現に上記の暴行が行われている場所ということになります。
問題となるのは,「勢いを助ける行為」の内容です。
現場で言葉や動作によって暴行の勢いを助ける場合,傷害罪や傷害致死罪の幇助犯となる可能性があります。
どのようなときに幇助犯となり,どのようなときに現場助勢罪となるのでしょう。
一般に,幇助は正犯に援助を与えることにより,その構成要件該当行為を促進し,さらには構成要件該当事実の惹起を促進することを意味します。
よって構成要件該当行為や構成要件該当事実の惹起を促進するものであれば,武器や道具を与えるといった物理的な援助だけではなく,助言や精神的に犯行を容易にする行為も幇助となり得ます。
判例(大判昭和2・3・28刑集6巻118頁)では,喧嘩などの現場で一方の正犯者(暴行を行う者)に向けられた心理的幇助行為は,傷害罪の幇助犯として処罰されるものとしています。
実務では,この判例の立場から一方に声援を送るなどしてはやし立てる行為は現場助勢罪ではなく傷害罪や傷害致死罪の幇助として扱われることがほとんどです。
よって現場助勢罪は特定の人の犯罪実行を容易にするという効果をもたない野次馬的な行為についてのみ適用が考えられる犯罪ということになります。
暴行や傷害の現場ではやし立てる行為を行った場合,現場助勢罪や傷害罪等の幇助だけではなく,傷害罪等の教唆に問われる可能性もあります。
傷害罪等の教唆となり得る状況としては,まだ暴行に及んでいなかった者に対して「やってしまえ」などと声をかけ,その言葉によって暴行に及んだ場合などが考えられます。
このような状況ではまだ暴行が行われていない以上「犯罪が行われるに当たり」という条文の意味に事実が合わないため現場助勢罪には問われません。
傷害罪の法定刑が15年以下の懲役または50万円以下の罰金,傷害致死罪の法定刑が3年以上の有期懲役となっていることに比べて,現場助勢罪の法定刑はかなり軽いものとなっているため,現場で暴行をはやし立てる行為を行った者から依頼を受けた弁護士は,出来る限り無罪や現場助勢罪にすぎないという主張を行うことになります。
Aさんの行為についても,暴行行為の具体的な内容経過によっては現場助勢罪に止まる可能性があります。
【弁護活動】
現場助勢罪や傷害等の幇助の被疑者から依頼を受けた弁護士は,暴行の被害者や遺族に対して謝罪を申し入れ示談を進めていきます。
示談によって告訴を取り下げてもらったり宥恕を得ることができれば,示談内容によって起訴を回避できたり執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
出来心で野次馬的に暴行や喧嘩をはやし立てる行為を行ってしまった場合でも,ときとして罪に問われてしまう可能性があります。
自分では些細なことと考えていても,法律上重大な結果をもたらしてしまうことは大いにあり得るものです。
刑事事件の被疑者となってしまった方は,その罪名にかかわらず早急に刑事事件に強い弁護士に相談し事件を依頼することをおすすめします。
暴行を煽る言動をし傷害罪等の幇助や現場助勢罪の被疑者となってしまった方,神奈川県瀬谷警察署で取調べを受けることになってしまった方は,お早めに刑事事件・少年事件を専門としている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部にご相談ください。
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