大麻所持で即決裁判
- 2020年10月15日
- コラム
大麻所持で即決裁判
大麻を単純所持していた場合の罪と即決裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部が解説致します。
【ケース】
神奈川県川崎市中原区在住のAは、川崎市中原区内の会社に勤める会社員です。
Aは芸能人の大麻所持・使用報道を見て、自身も大麻の効用について興味を持つようになりました。
そこで、AはSNSを使って大麻を売っている売人を探し、乾燥大麻5グラムを購入しました。
しかし、実際に使用してみたところ、乾燥大麻は体質に合わなかったため使用を中止しました。
使わなかった乾燥大麻は捨てようか悩みましたが、せっかく購入したのだから勿体ないと考え、自宅に保管していました。
数日後、Aの自宅に来たAの家族は、乾燥大麻を見つけて川崎市中原区を管轄する中原警察署に相談し、Aは大麻取締法違反で捜査を受けることとなりました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【大麻の単純所持について】
御案内のとおり、大麻は所持や輸出入、栽培などは大麻取締法などに違反します。
ケースの場合、大麻の単純所持にあたる可能性があります。
法定刑は5年以下の懲役です(大麻取締法24条の2)。
なお、大麻を所持している場合については「単純」所持のほかに「営利目的」所持があります。
営利目的に当たるか否かについては、利益のほかに所持量など総合考慮して検討されます。
営利目的の場合の法定刑は7年以下の懲役で、200万円以下の罰金刑が併科されることもあります。
【即決裁判手続とは】
即決裁判手続は、事案が明白であり、軽微で争いがなく、執行猶予が見込まれる事件について、速やかに公判期日を指定して、相当な方法により審理を行い、原則として即日に執行猶予判決を言い渡す手続です。
即決裁判手続は、2004年の刑事訴訟法改正により新設されました。
大麻取締法違反事件の場合、自白しており、所持や使用のような比較的単純な事案では、即決裁判手続に付される可能性があります。
即決裁判手続の要件
1.事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれるなど。即決裁判手続で審理するのが相当と認められる事件であること。(刑事訴訟法350条の2第1項)
2.死刑、無期、短期1年以上の懲役または禁錮にあたる罪ではないこと。(同法350条の2第1項但書)
3.被疑者の書面による同意があること。(同法350条の2第2項・3項)
4.被疑者に弁護人があるときは、弁護人の書面による同意があるか、少なくとも意見を留保していること。(同法350条の2第1項)
これらの要件を満たす場合、検察官による即決裁判手続の申立てが行われます。
【即決裁判手続のメリット】
即決裁判手続は、起訴からできるだけ早い時期に公判期日が指定され、原則として1回の審理で即日執行猶予判決が言い渡されます。
そのため、被告人にとっては、起訴後速やかに公判期日が開かれ、執行猶予判決となるメリットがあります。
つまり、
①通常の裁判よりも早く公判期日が開かれるので、事件が終了するまでの期間が短縮される。
②通常の裁判は、少なくとも、公判期日1回と判決期日1回が設けられるので、2回以上裁判所に足を運ばなければならないが、即日判決言い渡しだと1回だけで済む。
③必ず執行猶予判決が言い渡される。
ので、被告人にとっては有利な制度となっています。
このようなメリットがあるため、争いがなく執行猶予が確実に見込まれるような事件であれば、捜査段階で検察官に即決裁判の申し立てをするよう働きかけるのもよいでしょう。
しかし、即決裁判手続では、被告人の出頭義務が緩和され、検察官の冒頭陳述も省略され証拠調べも適当と認める方法で行われるなど、手続が簡略化されています。
また、即決裁判手続により審理でなされた判決については、事実誤認を理由とする控訴・上告ができません。
このような重大な効果が生じるため、即決裁判手続に付すには、被告人および弁護人の同意が必要とされています。
弁護人は、即決裁判手続の趣旨、審理手続、メリットおよびデメリットを十分に被告人に説明した上で、同意するか否かの判断をするよう適切なアドバイスをすることが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
神奈川県川崎市中原区にて、乾燥大麻を所持していたことで事件化してしまい、即決裁判について聞きたいという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所横浜支部に御連絡ください。