盗撮で勾留前の釈放
- 2021年1月30日
- コラム
盗撮と勾留前の釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所堺支部が解説します。
◇盗撮事件で逮捕◇
会社員のAさんは、堺市から和歌山方面に向かう電車内で盗撮したとして大阪府高石警察署の警察官に大阪府迷惑行為防止条例違反で逮捕されてしまいました。
Aさんは、逮捕後、大阪府高石警察署内の留置場に収容されましたが、警察官の「弁解録取」を受けた後、逃亡のおそれがない、罪証隠滅のおそれがないと判断され、検察庁へ送致(送検)される前に釈放されました。
Aさんの妻が警察署からの逮捕の知らせを受け、すぐに警察署へ駆けつけ身柄引受人となったことも大きかったようでした。
自宅へ帰ったAさんは妻と相談し、刑事事件専門の弁護士へ示談交渉を依頼しました。
(フィクションです。)
◇勾留前に釈放されることがある◇
逮捕されても勾留される前に釈放されることがあることをご存知でしょうか?
「ご家族が逮捕された」との知らせを受けても絶望することなくまずは気持ちを落ち着けましょう。
~逮捕から勾留までの流れ~
「逮捕」→警察の留置場に収容→警察官の「弁解録取」→留置→検察官送検→検察庁での弁解録取→検察官の勾留請求→裁判官の勾留質問→裁判官の勾留決定
「逮捕」から「裁判官の勾留決定」までは概ね2日間を要します(送致の翌日に勾留が決定した場合は3日間)が、裁判官が勾留決定すれば、勾留状に記載された留置施設に収容されます。
期間は10日間で、その後「やむを得ない事由」がある場合は期間を延長されることもあります。
身柄拘束期間が長引けば、逮捕された方の肉体的、精神的な負担となるばかりではなく、様々な社会的不利益を受けるおそれも出てくるでしょう。
ところが、この警察官や検察官の「弁解録取」の後、あるいは裁判官の勾留質問の後に釈放されることがあるのです。
~どうして釈放されるの?~
そもそも身柄を拘束される大きな理由は、被疑者に
①罪証隠滅のおそれ
②逃亡のおそれ
が認められるからです。
そこで、こうしたおそれがないと判断された場合は釈放されるのです。
釈放権限を持つのは、弁護士でも裁判官でもなく警察官、検察官です(裁判官が勾留請求を却下した場合でも、最終的に釈放するのは検察官です)。つまり、警察官、検察官は、被疑者に①罪証隠滅のおそれや②逃亡のおそれがにないかどうかチェックし、これらのおそれがある判断した場合は身柄を拘束し、おそれがないと判断した場合は、自らの権限で釈放できるのです。
◇弁護士の役割◇
しかし、ときにこのチェック機能が有効に働かない場合があります。
現実に不当・違法逮捕事案も発生しています。
そこで、裁判官によるチェックが必要となるのですが、裁判官は、基本的に被疑者から聴いた話や捜査記録に現れた事情をもとに身柄拘束を継続するか否か(勾留するか否か)を判断しています。
つまり、裁判官が知り得る事情にも一定の限界があるのです。
そこで弁護士は、裁判官に働きかけ、裁判官が知りえない事情を知ってもらうことによって公平な裁判を実現することができます。
弁護士は、接見によって逮捕された方からはもちろん、ご家族や関係者などからも話をお聴きした上で、書面化した上でそれを裁判官に提出します(タイミングが合えば警察官、検察官に提出することも可能です)。
また、こういった刑事弁護活動を行うことによって、各関係機関に、「弁護士が監視していますよ」「きちんと身柄拘束の可否を判断してくださいね」と暗示し、身柄拘束に対し一定の抑止力を及ぼすことにもつながります。
◇釈放されても安心できない◇
無事に釈放されててもそれで事件が終わりというわけではありません。
勾留される前に釈放された場合、私選で弁護人を選任しなければ、釈放後の弁護活動を受けることはできません(国選の弁護人は選任されません)。
にもかかわず、捜査の手が緩められることはありません。
釈放された反動から、反対に取調べが厳しくなることも予想されます。
取調べ対応や被害者への被害弁償、示談交渉をお望みの場合は私選の弁護士に弁護活動を依頼しましょう。