詐欺罪

刑事事件に特化した弁護士に依頼することで，身柄解放や示談交渉を円滑に進めることが期待できます。

第１　詐欺罪

「息子が振り込め詐欺事件で警察に逮捕された。」　　
「示談をしたいが，被害者と連絡がつかずに困っている」　　
「他人を騙してお金を受け取った容疑で警察の取調べを受けて不安だ」

このような悩みをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

これらのケースは，詐欺罪として刑罰を受ける可能性があります。詐欺事件をお起こしたりその容疑をかけられてしまった場合，なるべく早く専門の弁護士に相談し，取り調べ対応，身柄解放，示談などの対応をとることが重要です。

身柄解放って，上手くいくの？　　　
示談交渉って，どうやるの？　　　
刑務所に行かなければいけないの？

このページでは，
①詐欺罪とは，どのような犯罪なのか。
②オレオレ詐欺や振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺とは
③処分の見込み。特に，特殊詐欺の量刑相場
④詐欺罪の容疑をかけられてしまったら。

について解説します。

第２　詐欺罪とは

１　財物

人を欺いて，財物を交付させると，詐欺罪が成立します。法定刑は，１０年以下の懲役です。「人」を欺くことがポイントです。刑法第２４６条第１項に規定されていることから，１項詐欺ともいわれています。　　　
財物についての詐欺罪の具体例は，相手を騙して，現金５０万円を振り込ませることです。

２　財産上不法の利益

人を欺いて，財産上不法の利益を得，又は他人にこれを得させた場合，詐欺罪が成立します。法定刑は１０年以下の懲役です。「人」を欺くことがポイントです。刑法第２４６条第２項に規定されていることから，２項詐欺ともいわれています。

具体例としては，宿泊代金を支払う意図がないにもかかわらず，宿泊代金を支払う意図があるとホテルの従業員に誤解させ，ホテルに宿泊してしまうことです。

第３　電子計算機使用詐欺罪とは

今まで説明してきた詐欺罪とは別に，電子計算機使用詐欺罪があります。人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り，又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して，財産上不法の利益を得，又は他人にこれを得させた場合に，電子計算機使用詐欺罪が成立します。大まかにいえば，人ではなく，機械を相手にする場合に成立します。

具体例としては，銀行のオンラインシステムで虚偽の振り込み情報を入力し，財産上の利益を得る場合が挙げられます。法定刑は１０年以下の懲役です。

第４　準詐欺罪とは

未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて，その財物を交付させ，又は財産上不法の利益を得，若しくは他人に得させた場合，準詐欺罪が成立します。法定刑は，１０年以下の懲役です。

具体例としては，判断能力が未熟な未成年者に付け込んで，現金を交付させることが挙げられます。

第５　詐欺の例

詐欺といっても，様々な種類があります。いくつか例を見ていきましょう。

１　無銭飲食

無銭飲食とは，最初から代金を払う意図がないにもかかわらず，その意図を店員に隠して，飲食物の提供を受けることです。

２　保険金詐欺

保険金詐欺とは，保険の対象者が怪我や病気，死亡したと見せかけて，保険会社に対し，保険金の支払いを請求することです。

３　オレオレ詐欺

オレオレ詐欺とは，高齢者に対し，その子供などになりすまして，お金が必要だと嘘をつき，銀行口座にお金を振り込ませる，現金を交付させることです。

４　結婚詐欺

結婚詐欺とは，結婚する気がないにもかかわらず，結婚すると誤解させて，相手から現金その他の財産をもらう行為です。

５　リフォーム詐欺

リフォーム詐欺とは，リフォームする技能がないにもかかわらず，技能があると誤解させ，材料費や工事費の名目で，現金を騙し取る行為です。

６　ワンクリック詐欺

ワンクリック詐欺とは，ウェブページ上のURL等をクリックすると，「ご契約ありがとうございました」などと表示し，契約が成立したと誤解させ，現金を騙し取る行為です。

第６　特殊詐欺

１　特殊詐欺とは

特殊詐欺とは，面識のない不特定多数の者に対し，電話等の通信手段を用いて，対面することなく被害者を騙し，現金やキャッシュカードなどを交付させる詐欺です。

特殊詐欺には，様々な種類があります。特殊詐欺は，大きく分けて，振り込め詐欺と，振り込め詐欺以外の特殊詐欺の２種類です。

２　特殊詐欺の種類

⑴　振り込め詐欺

①オレオレ詐欺

家族や警察官，弁護士等を装って，「会社の金を使い込んだことがばれてしまった。」，「交通事故の示談金を払わなければならない。」，「借金の返済に追われている。」等と言って，「家族のためにお金を振り込まなければいけない」と誤解させて，現金を振り込ませる詐欺です。

②架空請求詐欺

「有料サイトに登録されたので，利用料金を支払ってください。支払わないと，裁判を起こします。」等と言って，「有料サイトの利用料金を支払わなければならない」と誤解させ，現金を振り込ませる詐欺です。

③融資保証金詐欺

実際には融資する意図がないにもかかわらず，「担保不要で，誰でも融資します。融資の審査は簡単です。」等と言って，「簡単な手続で融資を受けられる。」と誤解させます。その上で，犯人は，融資に先立ってお金を振り込んでほしいと頼みます。誤解した被害者に現金を振り込ませるという手口です。

④還付金等詐欺

犯人は，自治体や税務署などの職員を装い，「医療費や税金の還付のため，ATMに行ってください。」と言って，「お金を支払ってもらえる。」と被害者に誤解させます。犯人は，急がなければ還付金を受け取ることができないと強調した上で，携帯電話を持ってATMに行くように指示します。被害者がATMに到着すると，犯人は犯人の指示するとおりに捜査するよう強調した上で，「振込のボタンを押してください。」，「入力が終わったら，確認ボタンを押してください。」等と言います。本来は，犯人への振り込み送金の捜査を行っているにもかかわらず，被害者の口座にお金が振り込まれると誤解させて，ATMの捜査をさせます。

⑵　振り込め詐欺以外の特殊詐欺

①金融商品等取引名目

投資や商品の購入ができれば，利益が上がるものと信じ込ませた上で，架空の金融商品の購入代金として現金を振り込ませる詐欺です。

②ギャンブル必勝情報取引名目

メールや広告などで，パチンコやギャンブルの必勝法を教えると勧誘し，その情報により多額の利益が得られると信じ込ませます。その上で，会員としての登録料を事前に払ってほしい等と言って，現金を振り込ませる詐欺です。

③異性との交際斡旋名目

メール，サイト上などで「女性紹介」などと掲載し，これに申し込んだ人に虚偽の異性の情報を提供します。その上で，会員登録料等の名目で現金を振り込ませたり，異性になりすまして現金を要求したりします。

④その他の名目

上記で説明した名目以外の特殊詐欺です。

３　振り込め詐欺での役割

振り込め詐欺は，複数人でされることが一般的です。役割には，以下のようなものがあります。

①　指示役

犯行の計画を立て，他の共犯者に指示を出す者です。

②　掛け子

被害者に電話をかける者です。

③　受け子

被害者から現金やキャッシュカードを受け取る者です。

④　出し子

被害者から受け取ったキャッシュカードを使って，現金をATMで引き出す者です。

４　量刑相場

振り込め詐欺の主犯格は，指示役です。他方，逮捕される者のほとんどは，受け子や出し子です。受け子や出し子は，振り込め詐欺における末端なので，実刑判決にはならないと思う方も多いかもしれません。しかし，受け子や出し子であっても，実刑判決を下されることがあります。振り込め詐欺が重大な社会問題となっているからです。

第７　処分の見込み

１　処分の種類

　　　処分は，大きく分けて，不起訴処分か，起訴による公判請求です。詐欺罪には，罰金刑がないので，略式命令による罰金の処分はありません。

２　処分を決める主な要素

⑴　行為態様

行為態様が悪質だと重い処分になりやすいです。悪質な行為態様の例としては，常習的に詐欺の犯行を繰り返していることが挙げられます。

⑵　被害結果

被害結果が重大な場合，重い処分になりやすいです。１０万円を騙し取った場合と１００万円を騙し取った場合とでは，後者の方が重い処分となりやすいです。

⑶　動機・経緯

動機・経緯の内容も，処分の軽重に影響します。

⑷　示談の成否

示談の成否も，処分の内容に影響します。特に示談において，被害者から厳重な処罰は望まないという意向を得られると大きいです。

⑸　前科・前歴の有無

前科・前歴があると，重い処分になりやすいです。

第８　詐欺罪の容疑をかけられてしまったら

１　なるべく早く弁護士に相談

専門弁護士に相談することで，今後の処分の見通しについて知ることができ，対応がとりやすくなります。特に突然逮捕された場合には，これからの手続の進行が分からず，不安になることが多いでしょう。弁護士から適切なアドバイスをもらうことで，不安も和らぎます。

２　身柄解放

逮捕勾留をされた場合，身柄を拘束されるので，生活に大きな支障が生じます。仕事に行くことも，家に帰ることもできなくなります。身柄を拘束されて孤独な日々が続くと，肉体的にも精神的にも負担が大きいです。

被疑者，被告人の方のためには，早期の身柄解放が非常に重要となります。弁護士にご依頼いただければ，保釈等により，早期の身柄解放が可能です。

３　示談交渉

詐欺事件を起こしている場合には，被害弁償や示談をすることで不起訴処分により刑事裁判及び前科を回避したり，執行猶予などの軽い刑を目指したりすることができます。

被疑者，被告人の方が自ら示談交渉をしようとすると，いくつか困難な点があります。

まず，被害者との面識がない場合です。被害者の連絡先を知らなければ，示談交渉のしようがありません。警察が被疑者，被告人に被害者の連絡先を教えることはありません。このような場合，弁護士にご依頼をいただければ，連絡先を確認し，示談交渉に当たることが可能です。

また，被害者が複数いる場合も困難です。示談交渉の相手が増えるので，交渉が複雑化するからです。複数の交渉であっても，弁護士であれば適切に対処していきます。弁護士にご相談いただければ，適正な量刑相場を踏まえて，交渉をすることができます。

最後に，被害者の怒りが強い場合です。被疑者，被告人の方が連絡を取っても，被害者が感情的になってしまっていたら，交渉に全く応じてもらえないことが多くあります。詐欺罪の場合，大切な貯金を騙し取られたとして，強い怒りを示す被害者も多くいます。このような場合に，弁護士が入ることで，被害者も冷静になり，交渉に応じてくれることがあります。被害者の方と直接やり取りをしないで良いというメリットもあります。

４　法廷弁護

公判請求された場合，刑事裁判が開かれます。無罪主張はもちろんのこと，刑の減軽や執行猶予付きの判決を求めるのであれば，法廷での弁護活動が大切です。被告人の監督を約束する家族がいるのであれば，家族の証人尋問が考えられます。また，被告人質問も重要です。弁護士に依頼すれば，綿密な準備と打ち合わせをした上で，刑事裁判に臨むことができます。